WORLD PEACE NOW 4・5参加報告(世話人・辻信一)


今日のデモを振り返って思うことを一言で、と言われたら、ためらわず、「寒かった」です。ぼくは若いときにデモとよばれるものにずいぶん出た方ですが、今日ほど寒かったことは記憶にない。歳でしょうか。歳といえば、ぼくのすぐ隣に、若いお母さんとその5歳になる息子さんが黄色いカッパを着て歩いていました。彼女は、ぼくが本橋成一さんとやった対談に来ていて、ぼくを覚えていてくれた。5歳の子が、ちょっとやけになって「戦争やめろ!」と怒鳴っていたら、彼女は「そうよね、もうこんな目に合わされたくないもんね」と。その慰め方が、やさしくて、ユーモアも含んでいて、寒さに震えているぼくにはとても暖かく感じられた。途中で離れ離れになってしまったけど、果たしてあの子はどこまで歩けたかな?

ぼくの周囲に歩いていた人たちは年齢も様子もさまざまだったけど、でもみんな淡々として、落ち着いた平和そうな人柄を醸し出していた。そんな雰囲気に囲まれていなかったら、ぼくはとても最後まで歩けなかったと思います。すごい風と雨の中、それぞれが傘をさしていたから、コミュニケーションがとりにくく、どちらかといえばそれぞれが自分の世界の中で物思いにふけるといった感じになった。こういうデモというのも、ぼくの記憶にはありません。ぼくは今読み直している内山節の時間についての本のことを思い出しながら、自分が今経験しているこの「戦争反対のデモで知らない人たちと風雨の中を歩いている」という思えば不思議な時間について、ひとり考え込んでいた。ひとりではあったけれど孤独というのではなく、これが特に何かの効力をもつというのではないにしても、決して無駄というのでもない。情けないほど寒かったけど、空しくはなかった。

昨夜、すでに降り出した雨の音を聞きながら一句浮かびました。

明日も雨 イラクは鉄の雨 桜散る (李珪)

以上、辻信一より報告でした。



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