日本の人口は世界の2%程度ですが、木材輸入量は世界の34%を占めています。紙について考えてみましょう。あなたの身の回りに紙製品はありますか?印刷用紙、ノート、新聞、雑誌、ティッシュ、ダンボール、包装用紙、紙コップに紙おむつ・・・、あふれるほどの紙製品に囲まれているのがわかるでしょう。日本人は年間で平均249キロ、一日当たり約68グラム(A4コピー用紙15枚)もの紙を消費しています。この消費量はアメリカに次いで第2位、世界平均の5倍をいく量です。こういった紙の原料の約33%は輸入木材です(A SEED JAPAN編、2002: 50-54)。これらの木が切り倒され、また同じ太さの木が育つのにどれくらいの時間がかかるか、想像してみてください。人間が木材を消費するスピードと、木が育つスピードにどれだけの差があることでしょう。

紙の他にも輸入家具や建築材などを通して、日本は大量の森林資源を消費しています。東南アジアなどの熱帯地方から切り出される丸太の39%、広葉樹製材の8.4%は日本向けだとされています(沼澤、1999: 147)。割り箸も熱帯林を伐採して作ったものがあるようです(石、1988: 95)。

森林伐採においていちばん被害を受けるのは、自然と共生して伝統的な暮らしを営む先住民族の人たちです。森を失えば狩猟や薬草採りや樹皮を使った伝統工芸ができなくなります。彼らにとって森は文化の一部、つまり「森は生命(いのち)」なのです。1980年代、マレーシアのサラワク州では、日本向けの熱帯材伐採に対し、先住民と環境運動家が連携して大規模な反対キャンペーンを展開しました。

毎年地球上から本州の半分に相当する1,130万ヘクタールの森林が消滅しています。皆伐による森林の消滅は山の保水力を低下させ、下流地域での洪水や、地盤沈下などの現象を引き起こします。一部の人間の物欲を満たすための森林伐採は、生態系そのものを変え、めぐりめぐって人間の生活にも影響を及ぼしているのです。


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