ナマケモノ的「ROR」から地域の実践までさまざまなものを紹介してきました。とってもユニークなものが多いですよね。特にZOONY運動のような、個人が家庭や地域、職場からはじめられることは、自分が変わり、社会や世界が変わる第一歩です。あなたは、今日から、明日から何をはじめるか思いつきましたか?
個々人の取り組みが大切な一方で、環境問題の専門家であるレスター・ブラウンが述べるように、私たちはより大きな視野で社会経済システムについても考える必要がありそうです。レスターは著書の中で次のように述べています。
「私に何ができるでしょうか」という問い掛けに「いつも[L・ブラウンは]こう答える。『自転車を利用して、自動車の利用を減らしたり、新聞紙をリサイクルするなど、生活のあらゆる側面で私たち一人ひとりが自己改革をする必要がある』と。しかし、『それだけでは十分ではない』と私は強調する。私たちは社会経済システムを変えなくてはならない」(ブラウン、2002:
E)。
レスターが指摘する社会経済システムとは、経済の仕組みとビジネスのことです。第二次世界大戦以降、多国籍企業による開発という名の環境破壊、低賃金による長時間労働、農薬散布による生産者への健康被害などが問題になっています。日本でも長時間労働による「過労死(karoshi)」問題が世界中に衝撃を与えました。
もちろん、私たちは生きるために働かなければなりません。現在の社会では「円」「ドル」といった通貨によってモノの売買がされますから、私たちはその「オカネ」を手に入れるために、就職をしたりアルバイトをしたりするのです。
「自然と私たちはつながっているのだから、できるだけエコな生活をしたい」これまでハンドブックを読み進めてきたあなたはそう思いますか?でも、一社員としてのあなたは、企業の利益追求のため、企業理念に従って働かなくてはなりません。商品製造、流通、オフィスでの事務作業・・・様々な場面で「エコではないよなあ」と思う瞬間にぶつかることでしょう。個人レベルでの取り組みと企業レベルでの取り組みにはギャップがあります。
「何のために働くのか?」「どういう人生を送りたいのか?」多くの人が悩みます。日本では社会経済システムにわずかながら転機が訪れているようです。環境家計簿の公開、グリーン商品購入、植樹活動など、より環境負荷を減らすような経営に具体的に取り組む企業が出てきました。
また、若い世代の間には「『いい会社に就く』から『自分のやりたい仕事で生きる』へ」という視点の変化も生まれてきています。
第4章では、社会経済システムを変えることについて、企業人、ビジネスの担い手の視点から考えていきたいと思います。
個人や地域での取り組みと社会経済システムを変えるような動きとが両方ダイナミックに展開されていけば、変化はさらに「大きなうねり」となっていくでしょう。
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