2004年5月20日
今回のレポートは、ヤニのエクアドルでの住民登録と歯医者通院など(エル・ミラグロより)「都市化」されたコタカチにしばらくいたため、お届けするのが遅くなりました。
私のエクアドルでの生活はもちろんシンプルですが、何をするのにもみなさんが想像する以上に時間がかかることもまた事実です。
◆「時間」について考えた日
今回のエル・ミラグロへの道中では「時間」について学びました。
後ろに背負ったヤニがぐずる中、私の傍らで腕時計で遊んでいたパチャ。とても美しい赤オレンジの全長3メートルのランの下をくぐり抜けるとき、私はパチャに時計をなくしたら困るから遊ばないようにと注意しました。
そのときある考えが心をよぎりました。
もし私が時計をなくしたら、逆に、私は「時間」から解放されるのではないだろうか。それこそついに本物のナマケモノになる瞬間なんだ・・・。
私が腕時計を手放せる時機がきて、自然時間の中で暮らせるのはいつのことなのでしょう?(実際の私は、数年前国際イルカくじら会議でいただいたかけがえのない時計を心から気に入っているんです。)
・・・というような考え事をしていたら、エル・ミラグロに到着しました。時間を確認しようと手首を見ると、時計がない!ああ、やはり先ほど心によぎった思いは何かの啓示だったのです。
ルイスは帰り道に探してくれると言ってくれましたが、私にはとうてい見つかりっこない、1時間の道のりだし、どこで失くしたのかまるで手がかりがないのだからと絶望的になっていました。
同時に、もしルイスが時計を見つけたら、それは私がまだ時計を必要としているという啓示と受け止めようと自分自身に言い聞かせていました。
翌朝、ルイスが腕時計をもって現れました!山道のしげみの中からどうにかして見つけ出してくれたのです!!見つけ出してくれたことへの心ばかしのお礼を渡しました。
馬のシャンティは少し太り、前よりスタミナがついてました。また、私たちはシャンティのお嫁さんを見つけました。ダルシネアという名前の茶毛の雌馬です。値段交渉する必要がありますが。
◆エル・ミラグロでのワクワクプロジェクト!
インタグではここ数週間乾燥した天気が続いていましたが、すべての苗はたくましく育っています。あたりを見回すと植物がどんどん生長しているのがわかります。
雑草取り、植樹、石造りのオフィスの建設・・・、エル・ミラグロではやることがいっぱいです。
石で家を建てる方法についての情報を探していたのですが、ついにカルロスとサンディーの図書館で有益な情報をゲットすることができました!
どんなオフィスができるのか考えるだけでもワクワクしてきます!
さらにグッド・ニュースは、ジャッキーとリックというアメリカからのカップルがエル・ミラグロでこの石造りの家プロジェクトを手伝ってくれることになりました。ばんざい!!
これからの膨大な仕事をこなすために、他にも人をパートで雇うことにしました。ルイスはドン・レオンという50歳代の男性とその家族を、徒歩で2時間かかる彼らの家から連れてきました。
片道で2時間!晴れでも雨でもけわしい坂道をのぼってこなければなりません。ここの人々にとって、生きていく(お金を稼ぐ)ことの大変さ、彼らの生きることへのたくましさを改めて突きつけられました。
世界の半分の人々は生きるための食べ物を手にするためにこのような仕事を受けなくてはいけない一方で、あとの半分の人たちは飽食や運動不足で死ぬという世の中の不公正さに思いを馳せずにはいられません。
また、この現実は私に日本の典型的なビジネスマンを思い起こさせました。都心に働きにでかける彼らが過ごす息のつまったむさくるしい通勤電車での2時間。
私にはどちらの生活がいいなんて答えは出せません。
けれども、日本とエクアドルの2時間には、何か私たちに「本当の豊かさ」を考えさせるヒントが隠されている気がします。
◆スローな日常にある心の揺れ
エル・ミラグロでの生活に話を戻しましょう。
私は子どもの世話を見つつ、もっと「生産的な」仕事をしようと、種を植えたり、エリア全体のデザインをしたり、物を書いたり、オムツを洗ったりするチャンスを狙っています。
ヤニは起きている間中、家をはいはいするので、床をきれいに掃いておくことには余念がありません!さもないと、ヤニが壁からはがれた土ころを口の中に入れてしまうのです。
ああ・・!しかし現実にヤニは下痢になってさらにオムツの洗濯が増え、壁に空いた小さな穴は私たちをスパイするのに十分なほどになってしまいました。
ところで、今年初めての収穫を迎えるコーヒーの木から、赤く熟れた実を見つけることはとても楽しい作業でした。
私はたっぷりコーヒーの実を収穫し、ゆっくりと、時間をかけてそれらの皮をむき、水にひたして洗浄し、乾燥させます。そしてさらに一回皮をむいたものを煎って、ミルで粉に挽き、やっと一杯のホットコーヒーを飲むことができます。しかし、このコーヒーこそが富と搾取という世界の二分化を増大させるグローバリゼーションの象徴なのです。
エル・ミラグロでの平和でどこまでも緑広がる風景は、私にとっての安らぎです。ひとつだけ不自然な音といえば、かすか遠くに聞こえる飛行機のジェット音でしょうか。
エンジン音は、私の思いを家族のいるオーストラリアへと募らせます。
また、日本やこれまで経験した数々のサバイバルな旅へと記憶を蘇らせます。
時々、こんなに自然は雄大で美しいのに、エクアドルでのハードで不安定な生活から逃げ出したいという誘惑にかられることがあります。
同時に、騒音を撒き散らし地球の隅々までジェット燃料を消費して移動することができるマシーンを作った人類の「技術」に怒りを覚えるのです。なんて私たちは傲慢なのでしょう・・・。
◆自然の脅威
ラ・フロリダのサンディーとカルロス夫妻を訪ねました。パチャは同じ年頃の子どもたちと遊べるので上機嫌でした。サンディーは、インタグ地域で15人の子どもを集めて読み書きを教えています。子どもたちは絵やお話で楽しんだり、「楽しく学習する」活動に参加します。
私は家の建築に関する資料を探しながら、サンディーと一緒に音楽で遊んだり、カルロスと鉱山開発問題や意見交換をしたり、もうすぐ日本からやってくる世話人・中村隆市さんの歓迎プランを練ったりしました。ノートパソコンで映画も見ました!
インタグにはようやく雨が戻ってきたので、エル・ミラグロに撒いた種が元気に育つと私は喜びました。雨は日中降り続き、夜にはさらに激しさを増しました。
サトウキビの葉っぱで作った屋根にはいくつかの割れ目ができましたが、深刻なほどにはなりませんでした。川がうねり、しぶきが岩にぶつかる音を聞きながら眠りにつきました。自然の偉大さと謙虚さを実感した夜でした。
翌日、馬では川を渡れないことがわかり、アプエラまで歩いていくことになりました。
昨晩の雨で山道のところどころが細い川のようになっており、頼りない竹橋をわたるときには、眼下で激しくうねっている急流に何度も息を止める場面がありました。
続く・・。
|