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ナマケモノ・チャレンジ--電気の節約で市民風車を!
ピーター・ハウレット(ナマケモノ倶楽部会員)

 自然界には「節約」という手段を使って、危機的な状況を乗り越える例が数多く見られます。北海道のヒグマはマイナス20〜30度にもなる過酷な冬を穴倉に閉じこもり、冬眠するという徹底したエネルギー節約を実践しています。冬眠中のクマは活動期の37〜38度の体温を5度も下げ、一分間に40〜50回の心拍数を最低8回におさえ(米国アイオワ大学のエドガー・フォークによる)、体に蓄えた脂肪をスローに使いながら春を待つのです。

 乾ききった砂漠にはカンガルーネズミがいます。このネズミは水を「節約」する非常に効率の良い胃袋を持っています。ヒトでは尿中の尿素が約6%なのに対して、カンガルーネズミは24%もの高い濃度だそうです。つまり、ヒトと同じ量の尿素を排出するのに必要な水分をカンガルーネズミは4分の1ですませることで砂漠の厳しい環境を生き抜いているのです。(米国デューク大学のシュミット・ニールセンによる。)

 しかし、節約の横綱は何といってもナマケモノ。この動物は生存競争が激しい熱帯雨林を「節約」と「共生」で生き延びています。まず、体の構造そのものが「節約」をしていると言えます。他の哺乳類と比べて相対重量(体重に対する筋肉総重量)はおよそ半分しかないので、生きていくために必要とするエネルギーも半分でまかなっていることになります。さらに体温は30〜34゜と低く、外界の条件で体温を変化する事ができるので、エネルギーの消耗を少なくしています。さらに睡眠時間は一日平均19時間ともいわれ、ここでもまたエネルギーの「節約」をしています。この動物は「ナマケモノ」と言うより「セツヤクモノ」と名前を改めたほうが良いかもしれません。

 さて、われわれ人間をめぐる環境も今、危機的な状況にあるのです。私たち主に北半球の裕福な国の人間のここ100年の身勝手な行動が、環境汚染や地球温暖化や異常気象をもたらし、今や人間を含めた地球上の生命をがけっぷちまで追いやってしまいました。

 1992年の11月にノーベル賞受賞者の大半を含む世界で最も権威のある1700人の科学者たち(UCS憂慮する科学者同盟)は「世界中の科学者からの人類への警告」と題した共同声明を発しました。その書き出しは次のようなものでした。

 「人類は今、自然界との正面衝突への道を驀進しています。人間のさまざまな活動は地球環境とその貴重な資源に取り返しのつかないダメージを与えているのです。もしこのような破壊的な活動をそのままにしておけば、人間のみならず、動物や植物の世界の未来をも危機にさらすことになるのです。世界はもはや生命を維持し続けることができなくなるでしょう。破滅的な事態を避けるためには、私たちのあり方を根本的に変えることが必要なのです」

 それでは、今この危機的な状況から抜け出すために私たちはどうしたらいいのでしょうか。世界の科学者たちの警告を一言に置き換えると「節約を!」ということになるのではないでしょうか。クマが、カンガルーネズミが、そしてナマケモノが環境に適応しながらゆっくり進化したように、人間も今また「節約」の上手な生き物にならなくてはいけません。しかも、進化のためのゆっくりとした時間はもう残されていないのです。

 この「警告」から10年が経った今、私たちは科学者たちの言うとおり、「節約」の上手な人間に生まれ変わろうしているでしょうか。残念ながら、答えは明らかに「NO!」です。それどころか、多くの人はいまだに自分たちが危機的な状況にあるということをさえ認識していない、または認識したくないというのが現状です。次の統計がそれを物語っています。

*日本の道路を走るガソリン自家用車の平均燃費は1982年から1996年の間に14%も悪くなっている!
*北海道の一世帯当りの平均電気使用量は過去10年でおよそ月/50kWh増えている。(従量電灯AB契約者<北電>)
*函館の一人1ヶ月平均配水量は過去10年で120リットル以上増えている。

 節約どころか、私たちはますます、資源・エネルギー大量消費型動物になっているのです。これはもう「分かっちゃいるけど、やめられない。」ですまされるような問題ではありません。50年後に世界のサンゴ礁が消える!と警告されている今、100年後に世界の平均気温が2゜上昇し海面が50cm上昇し北海道の自然海岸の約80%が消失すると警告されている今、80年後に海面が40cm上昇し世界の沿岸域に住む7500万から2億人が家を失うと警告されている今、それでも私たちは何もしないでいられるのでしょうか。私たちの子供たちや孫たちに恨まれないようにするためには、今すぐに、「節約」に本腰を入れなくてはなりません。

 しかし、「節約をしよう!」と言うスローガンだけでは、なかなか動き出しにくいと感じる人もおおいようです。実現可能な努力目標を決め、自分の「節約度」を目に見える形で提示しないとその気になれないということは確かにあります。そこで、このほど、私たち「南北海道自然エネルギープロジェクト」では月500円分の電気使用量の節約という目標を掲げ、自分の「節約度」が見える方法を発案しました。それが「ナマケモノチャレンジ」2002年カレンダーなのです。

ナマケモノチャレンジ 2002カレンダー

 カレンダーの中心には「水車小屋のゴーシュ」と題した佐藤国男さんの版画、そしてその下に大きな「チャレンジグラフ」があります。このグラフの使い方を説明しましょう。

1. 電力会社に問い合わせて、2001年の自宅の月ごとの電気使用量/金額を記載した資料を送ってもらい、この情報をグラフに記入する。

2. 月500円以上の電気使用量の節約に挑む。

3. 毎月「電気ご使用のお知らせ」が届いたら、その情報をグラフに記入し2001年の同月の使用量から差し引き、500円以上の節約ができたら緑のポッチシールを貼る。

4. 節約した500円は郵便局の自動払込手続きをして、「エネファンド」ヘ。

 「南北海道自然エネルギープロジェクト」では、この「エネファンド」を基金として市民風車を建設しようと計画しています。NPO「北海道グリーンファンド」が昨年の9月に市民風車1号機を建設し、「クリーンなエネルギーを市民の手で作り出そう」という人は輪を広げていきたいものです。

 私たちの会のシンボルである「風の又三郎」と共に「どっどど、どどうど・・・」と、北海道の、日本の、そして世界のエネルギー政策に新しい風を吹き込みたいものです。皆さんもぜひ「ナマケモノチャレンジ」にご参加ください。

連絡先:「南北海道自然エネルギープロジェクト」事務局
    函館市柏木町35−4 アイズ内
    TEL:0138-55-2391 FAX:0138-51-2590

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