おわりに
これまで「Be the Change!」「変化になろう!」をキーワードに、私たち一人ひとりのライフスタイルと自然環境とのつながり、そして私たちが暮らす社会経済システムやビジネスと環境とのつながりについてみてきました。特に「自分のライフスタイルに責任を持つことからはじめよう!」とセヴァン・スズキが提唱した「ROR」という考え方を、日本に住む私たちがどう「自分のもの」として実践していくか、各地で広がる市民運動を紹介しながら考えてきました。
一方で、「経済のグローバル化」という国境を越えた経済活動と環境破壊に対し、個々人の取り組みだけでは画期的な社会の変革は望めないという現実も学びました。つまり、個人レベルでの取り組みと同時に、ビジネスという社会経済システムにおいても変化を起こしていかなければならないのです。
この大きな課題に対し、「スロービジネス」という新しい運動が生まれてきていることを第4章で紹介しました。人と人、人と自然をつなぐビジネス、持続可能でフェアでシェアを美徳とするビジネス・・・。これらは従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」をモットーとしてきた経済システムからみれば、なんとも非効率なビジネスモデルです。ですが、ネオ・リベラリズムに基づくビジネスモデルに対し、スロービジネスに携わる人たちはなんといきいきとした表情をし、ワクワクさせる企業コンセプトを掲げていることでしょう。
もちろん企業ですから利益を生み出す経営努力は、他のファストな企業と変わりありません。しかし、スロービジネスに携わる人たちは、利益以外のところに重きを置いています。それは仲間との信頼関係であり、生態系や生産者・消費者への思いやりです。「なぜこの仕事を選んだのか」という思いに立ち返れば、疲れは吹き飛び、スローな仕事をむしろ「喜び・誇り」に感じることができるのです。ハンドブックでは、経営が軌道にのった例、これから立ち上がろうとしている新しい動きなどをコラムで紹介してきました。
まだ認知度の低いこのコトバですが、「私はスロービジネスをめざしています」という人が今後どんどん増えていってほしいと、ナマケモノ倶楽部は期待しています。地球上を取りまく様々な環境危機や社会問題を自分のこととして捉え、個人・NGO・企業がパートナーシップを組んで問題解決に取り組んでいくことが、今後求められてくると思います。
このハンドブックを読んでいただいたみなさんにも、ぜひ一緒に「変化」のうねりを生み出す一端に連なっていただければ幸いです。
最後になりましたが、本ハンドブック作成に当たり、多くの方のご協力・ご助言をいただきました。ここに心より感謝申し上げます。
2003年10月
Life, love & peace,
ナマケモノ倶楽部
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