“変化”になるということ
セヴァン・カリス=スズキ


私たちは新聞やテレビから、国と国とが、権力と資源をめぐって争っているのを見聞きします。今年は最も暑い年の一つとして記録され、世界中で多くの破壊的な異常気象が発生しました。わたしの住むカナダでは大規模な山火事が起こり、広大な面積の森林を失いました。世界中で魚の漁獲高が減り、生物多様性が損なわれています。私たちは、これ以上、地球からの「SOS」を無視することはできません。地球は私たち人間の営みに対して激しく抗議しているのです。

それでも、私たちは地球に住み続けなければなりません。私たちは60億を越える人類としてこの星に生きていることを、心に刻まなければなりません。様々な統計データは、私たち人間が作り出した諸問題がとてつもなく大きいことを示しています。富める国々がエネルギーの大半を使い、汚染を撒き散らす一方で、貧しい国々は飢餓にさらされています。こういった状況に対する私たちの声は、短期的な利益のために動く政治家たちには届きません。地球が抱える諸問題は大きすぎて、私たちの手にはとうてい負えないように思えます。

しかし、考えてみてください。私たち一人ひとりが、統計の全体値を作り出しているということを。私たちの毎日における小さな選択一つひとつが積み重なって、気候変動のような大きな問題を作り出しているのです。買物における選択が積み重なって環境や文化を破壊する巨大企業を支えています。意識している・していないに関わらず、私たちの日々の行動が国家単位でのエネルギーや水の過剰消費に加担しているのです。

私たち一人ひとりが現在の経済システムを支えている消費者です。車を運転し、商品を買い、家庭電化製品を使って家事をする個々人の集まりです。同時に私たちは、未来の子どもたちの父親であり母親です。そして、私たち一人ひとりが、それぞれの人生の未来を変えていくことができるオンリーワンの存在なのです。

 だからこそ、それぞれの世代には責任があります。私たちは自分たちの世代の責任を認識しなければなりません。誰もがコントロールし、変えていけるもの。それは他ならぬ自分自身なのです。私たちを取り巻く環境とのつながりを作れなかったら、地球規模どころか国レベルの環境問題でさえ解決することはできません!あなたを取り巻く自然、人、コミュニティとのつながりを取り戻すこと、それが最初の一歩です。

昨年5月に「ROR=Recognition of Responsibilityキャンペーン」をスタートしてより、私は個人が持つパワーを意識させられる場面に何度も遭遇してきました。また私が国連の活動を通じて出会った素晴らしい人々…、彼らが取り組んでいる仕事に尊敬の念を抱き、刺激を受け、彼らから多くのことを学び続けています。同時に、私自身も“自分にできることを果たしていこう”という思いを強くしています。
これまでに私たちはアメリカ、カナダ、南アフリカ、そして日本のみなさんから何千もの「ROR」への宣誓を受け取りました。彼らの意思に、グローバルな潮流をも変えうる本物のパワーを感じます。私はそんな仲間たちと一緒に、環境問題や社会の不公正さに加担するのを止めようと、行動を起こしていけることを心から喜んでいます。

私たちは北と南、人間と動植物の住む生態系といった相互のつながりをもはや無視できないグローバルな時代に住んでいます。この状況を前向きに考えれば、私たち個々人が「ROR」を実践していくことで、お互いによい影響を与え、よい関係をつくりだしていくことが可能だということです。共に世界を変えていきましょう!

(セヴァン・スズキ:スカイフィッシュプロジェクト代表)


・・・「ROR公式資料集」目次へ・・・