ライフスタイルフォーラム2006 ナマケモノ倶楽部主催 課題別フォーラム
半農半スロービジネス 〜豊かさのモノサシ
日時:11月11日(土) 14時〜16時
場所:新宿御苑メインテント/パビリオン
出演:塩見直紀(半農半X研究所 代表)
中村隆市(スロービジネススクール 校長・株式会社ウインドファーム 代表)
藤岡亜美(SlowWaterCafe有限会社 代表)
司会進行:小林祐哉(ナマケモノ倶楽部事務局)
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好きなことと社会にいいことをつなぐ「スロービジネス」が働き方の選択肢のひとつとしてゆっくり広まっています。
収入の半分を自給的生活で、残りの半分を自分の好きなことや個性を活かしたことをおこないながら社会に役立ち対価を得ていく「半農半X」に焦点をあて、オカネやモノの量でははかれない「本当の豊かさ」=GNH度のあがるライフスタイルを実践されているゲストをお招きし、『豊かさのモノサシ』についてビジョンを共有しました。
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■「GNH」がアツイ!
ナマケモノ倶楽部は「ナマケモノになろう!」を合言葉に1999年に発足した市民団体(NGO)です。環境+文化運動+エコビジネスという3分野の融合をめざしたスロームーブメントを提唱・実践してきました。
最近、特に若い人たちの中から、「GNP」や「GDP」のP(モノ)ではなく、「GNH」のH(しあわせ)に重点を置くことが「豊かさ」だと感じる人たちが増えています。「GNH」とはブータンの王様が提唱した「国民総幸福」。西洋型の経済成長によってもたらされた環境問題、貧困、社会問題を解決するひとつのモノサシとして、アジア発の「GNH思想」が注目を浴びています。
ビジネスにおいてもGNH度を高める「しごと」のあり方がきっとあるはず。「農的な暮らし」に着目しながらスロービジネスに取り組んでいるゲストたちに、まずは自身のワーキングスタイルから紹介していただきました。
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■個性を活かす持続可能な暮らし
「半農半X」というコンセプトを提唱されている半農半X研究所の代表・塩見直紀さん。「半農半X」とは、持続可能な小さな暮らしとしての【農】と、天与の才を活かした仕事としての【X】の2つを両立させて生きる新しいライフスタイルの提案です。
塩見さんのXは、「半農半X」という生き方を多くの人に伝えることです。「X=天職を活かせる社会のほうが、より幸せなのではないでしょうか。」とコメントする塩見さん。半農をしながら、執筆やワークショップを通じて、みなさんのXを発見するお手伝いをしています。
■塩見直紀さん(半農半X研究所 代表)
自分探し(天職探し)と環境に関心を持っている人が増えている中、環境や人のいのちを大切にするスロービジネスと「半農半X」の組み合わせは、今後、ビジネスの一つの方向性になりうるかもしれないとの提言をいただきました。
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■個性を活かす持続可能な暮らし
藤岡亜美さんは南米エクアドルからのフェアトレード雑貨、食品を取り扱うスローウォーターカフェ(有)(以下:SWc)の共同代表を務めています。
■藤岡亜美さん(スローウォーターカフェ 代表)
鉱山開発問題の起きたエクアドルのフニン村では、現地の住民が「お金を取るのか、自分たちの暮らしの豊かさをとるのか?」と迫られ、物質的な豊かさではない、環境も守る暮らしの豊かさを選びました。
SWcでは、彼らの暮らしを【持続可能】にするためのフェアトレードビジネスを2003年から展開しています。現地の問題を真面目に伝えるだけではなく、おいしさ、可愛さ、たのしさも添えてお客様に届ける努力を惜しまない企業努力が、生産者、消費者双方のGNH度をあげています。
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■ビジネスは悪くない
中村隆市さんは、スロービジネススクールの校長先生です。今でこそ数社の会社経営に携わるビジネスマンの中村さんですが、「若いときにはビジネスがあるから経済、環境が悪くなると考えていました」と自身の20代を振り返ります。
■中村隆市さん(スロービジネススクール 校長)
しかし、ビジネスじたいが悪いのではなく、実はビジネスの【中身】が悪いのだと気がついたことで、1987年に「有機農産物」を広めるウインドファーム社を設立。さらに2004年には、若い人たちにもっと「スロービジネス」に取り組んでほしいと、実践の場、学びの場としての「スロービジネススクール」を開校しました。
既存の起業塾とは異なり、校長も講師も生徒も一緒になって「スロービジネス」に邁進する一方、田んぼを耕したり、セミナーやエコツアーを自主企画したりと、ライフスタイルを巻き込んだ活動を展開しています。GDPやGNPばかり追い求めてきた従来のビジネス界からも、GNHおよびスロービジネスという概念は、「豊かさ」を問い直すビジネスとして注目をあびています。
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■社会を幸せにするスロービジネス
フォーラム後半はゲスト3人が考える「豊かさ」についてじっくりお聞きしました。
「家族との時間が一番大切。収入が減っても家族の時間を優先すべき」と塩見さん。藤岡さんも「物づくりを通じて生まれる人と人とのつながりがハッピーにつながる」とコメントします。中村さんは「(物質的ではなく)内面的に充実した生活と、自分で生産活動に携わることが豊かさにつながる」とまとめます。
「半農半X」の「X」について様々な事例をみてきた塩見さんからは、「好きなこと」や「社会にいいこと」を「ビジネス」につなげるポイントについて、中村さんに再度コメントを求めました。
中村さんは「スロービジネスは社会を幸せにする仕事。社会にいいことをするという点では市民運動と同軸のスタンス」と解説します。例えば、マイ箸を広めたり、それを商品化することは、環境問題の解決につながると同時に、スローなビジネスにもなりえます。自分がどういう社会に暮らしたいか、どういう仕事に関わりたいかを自身に問いかけ、「自分の気持ちに正直でいることが大事」と最後に中村さんは付け加えました。
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■あなたの「X(天職)」は?
当日は激しい雨にも関わらず、会場は熱気にあふれ立見が出るほどでした。参加者の年齢層は幅広く、3人のゲストが持つキーワード(半農半X、フェアトレード、スロービジネス)に高い関心があることが伺えました。また、参加者・ゲストともに笑みが多かったことも印象的でした。
それぞれの「好きなこと」と「社会にいいこと」をビジネスにつなげることで、GNH度の高い生活を手にした3人のゲストたち。では、私たち自身はどういう暮らし方(ライフスタイル)、働き方(ワーキングスタイル)を叶えていくのでしょうか。スロービジネスの今後がたのしみです。
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