【レポート】ナマケモノmeetsべてるの家
がんばらない生き方〜べてるの家とスローライフ |
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辻さんがスローライフ運動をする中で早くから注目していたべてるの家。
辻さんはいつも以上にワクワクしていました。
会場には、カフェスローに始めて訪れる方、べてるの家のことを知りたいという方が80人も集まり、
まさにナマケモノmeetsべてるの家という感じでした。
べてるの家の方々も「ナマケモノ倶楽部」という言葉に反応してくれるとか。
深津高子さん、向谷地生良さん、辻さんが対談形式で話を進め、
途中奥さんの悦子さんも参加するなど盛りだくさんなスロートークでした。 |
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○がんばらない
これは宇宙塵(当日は最前列で楽しそうに聞いていました)と辻さんのテーマでもあります。
向谷地さんのお話では、精神障害の多くは、心がついていけないほど身体が頑張りすぎて、それに追いつこうとさらに頑張ってしまうというもの。べてるには、子どもの時から周りのプレッシャーで頑張ってきた人がいる。中には幻聴が「頑張れ」だった人も。
時代の空気に敏感に反応してしまうのですね。べてるの家がやっている矛盾社の、「期待されない会社」「いつでも廃業」という肩の力が抜けるようなモットーは、頑張りすぎず、自分の心のペースでいいよというメッセージなのかもしれません。 |
○当事者研究・弱さの情報公開
今、各地で流行りの「当事者研究」。
当事者研究とは、自分について、自分の病気のことを見つめ、とことん研究すること。
べてるの家では自分で自分の病名をつけるそうです。
そしてそれを「弱さの情報公開」といって、周りに自分の弱さを公開し、
お互いに知ることで、「弱さの絆」を作り出し、仲間同時で頼りあう。
弱さを排除した純粋な強さは実はもろいが、
弱さが集まったとき、べてる的強さ、本当の強さが生まれる、と向谷地さんは言います。
苦労や悩みは、独り占めしないでみんなの共有財産にする。
また、浦河で一番大事なイベントは、お葬式だということに驚きました。
べてるのお葬式はみんな手作り。
仲間の死を通して、みんなで見送ってくれる、安心して死ねると思い、
生きる力をもらうそうです。
人間は、生まれた瞬間に死に向かっている、「命の傾き」がある。
人の死が人を生かす、そんな「死ぬことの文化」がそこにあります。
当事者研究によって、薬の量を減らすこともできます。
日本では、世界に比べ5〜10倍も薬を処方され、薬づけになっても、
病気が治るとは限りません。
例えば突然暴れて、病院に連れていかれ薬を投与されていた人が、
べてるにきて当事者研究を続けて、
その原因(ただおなかが空いてるだけだったとか!)や前兆を知ることで、
回避するようにしたり症状が和らいだりする。
べてるの家にとって「快復」とは、「病気が治ること」ではなく
「自分の悩みを背負えるようになること」。
病気になって狂った世界から抜け出せたのに、易々病気を手放したくない
と思ってる人もいるようです。
どちらが「狂った世界」か、考えさせられます。
○べてる的経済
その狂った世界にどう関わっていくか。
競争社会の経済活動から排除され、病気になった人々が、
「狂った世界」から「降りる」ことで初めて正常になる。
そこにまた飛び込んで、ビジネスをやっていく。
いろんな人が経済に流れ込むことで、面白いことがおきるのではないか、と向谷地さん。
辻さん曰く、未来の資源まで盗んで発展する上昇志向の今の経済体系は長く続かない。
べてるが目指すのは、「人間の顔をした経済」。
カレンダーの日付が間違っていても、それが逆に人気を呼ぶ市場があり、
働く人が、自分でルールや目標を決め、自分のペースで仕事をできる。
本来の人間らしさを中心にした、オルタナティブな経済社会です。
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そして、「苦労をとりもどす」こと。モンテッソーリ教育にも共通することですが、自らの工夫・苦労を経験することで人間らしさや健康をとりもどすことができるといいます。
このような、べてるの家の取り組み、考え方が今、
浦河という地域を変え、日本中世界中に発信し、注目を集めています。 |
お話を聞いていて、なぜみんながべてるに魅かれるのか分かった気がします。
「狂った世界」で頑張ってる人たちも、心のどこかで今の社会に疑問を持っている。
魂を置き去りにして暴走する社会に流されながら、
人間らしさを取り戻したいと願っている人が、沢山いると思います。
そして、「障害者」と「健常者」の線引きはできないということ。
もちろん、べてるの家の人たちは多くの苦労や辛い体験をしている、
ということを考えると、全く同じというのは失礼かもしれません。
ただ、誰もが精神障害を持つチャンスに恵まれてしまっているのが今の社会ではないでしょうか。
もしかしたら私も病気かもしれない、と思ってショックでしたが、
当事者研究したらどんな病名がつくのか考えたら、ちょっと楽しくなっちゃいました。
べてるは深津さんのいう「自分を表現できる場」であり、
向谷地さんが言うように「いろんな人がいるからこそ面白い」のです。
べてるの家だけでなく、全ての世界がこんな社会になったら素敵だと思いました。
今後も、ナマクラとべてるの関係は続きそうです。
楽しみにしています。あ、あまり期待はしないように・・・。 |
ナマケレポーター:井ノ上裕理@なまくる
写真: ゆっくり堂 |