ナマケモノ倶楽部とは
ナマケモノ倶楽部とは
これまでの支援先
会員になるには?
ナマケモノは怠け者?
   
さまざまな動き
イベント情報 NEW!
ROR-JAPAN
地域通貨「ナマケ」
スローカフェ宣言
zoony(ズーニー)運動
ジャパン・アズ・ナンバー9
100万人のキャンドルナイト
 
これまでの活動実績
過去のイベント一覧
 
2004年のイベント

9月23日(祝)RORキャンペーン2004
「”スロービジネス”という快楽〜非電化・アウトドア・フェアトレード

イベント報告はこちらから!(記録:中村恭子)
イベント講演録(テープおこし:藤岡亜美)
<転載ご遠慮ください。2005年春にキャンペーン報告集を出版予定です>
藤岡:こんにちは。「非電化やアウトドアの話を、電気の街、秋葉原で聞く」という不思議な空間に、みなさんようこそいらっしゃいました。主催のナマケモノ倶楽部は、ちょうど発足して5年たつ、環境と文化をつなぐNGOでして、南米にいるミツユビナマケモノという動物の、循環型で、低エネルギーで、そして非暴力な生き方を見倣い、地球環境に負荷のかからないライフスタイルを目指しています。今日は、アウトドアで、非電化で、フェアな男の、「スロービジネス」というタイトルでお話をいただき、この場所を一瞬でも森のような気持ちのよいところにしますので、おつきあい下さい。

「快楽」というキーワードは、今日も後で売っているナマケモノ倶楽部世話人の辻信一さんの新しい著書「スロー快楽主義宣言」に拠るのですが、今回、仕事の話をされるときやけに愉しそうなお3方が揃っています。運良く3人にお話をお聞きしたことがあるのが私だけだったので、「絶対面白そう」と思いまして、コーディネーターを勤めさせて頂くことになり、「快楽」とつけることを提案しました。というのは私の参加動機なのですが、今日は会場にいらっしゃる150人のみなさんにも申し込みの際に、それぞれがなぜ参加したいかを伺って、講師にちゃんとお届けしてあります。

中には、「自分が(スロービジネスを)やりたい」とか「取材をしたい」(今日は雑誌の取材の方が多くいらっしゃいます)というものもあったのですが、大半の御意見は「スロービジネスに関して漠然とは分かって、強く共感しているが、具体的なイメージがまだ描けていないので、是非3人の話を聞いてみたい」というものでした。

なので「スロー」という言葉を、なぜ「ビジネス」の前につけなくてはいけなくなったかは、みなさんお分かりだと思います。私たちの経済活動が、利益や効率ばかりを優先させてきた結果、人のつながりや、自然と人間のつながり、個人の心のあり様というものが、ないがしろにされ、地球の資源や人の心を含めた、経済自体が行き詰まりを見せているという状況があります。

ただ、経済というものが、もともと、人々の暮らしを豊かにするための道具であったように、字面ではスローと相反するように見えても「ビジネス」とは、本来、お金もうけのことではなく、社会的な価値を生み出すことです。その結果として、またはそれを持続可能にする手段として、私達はお金を受け取っているにすぎなかったわけです。

だけど、参加動機には「何のために働いているか分からなくなった」、「スローライフがしたい」とか「クイッククイック、金、金の波長に疲れた」など、深刻な意見が多数みられました。それを見て、やはりそろそろ「競争を越える原理」を、社会も人々の心も求めているのだと思ったのですが、その原理のことを私達は「スロー」と呼んでいます。で、今回は3人の経営者のお仕事の中から、「自分もみんなも気持よくする仕事」、社会をスローダウンさせる、世界を変える会社に求められる「スローな原理」とは、具体的にどういうものなのか、ということを、ここにいらっしゃる150人150通りの視点で、探っていただければと思います。

それでは、順番に事業のご説明と、そこにいたるまでのいきさつをお話いただきたいと思います。まずは「人と自然とをつなげるアウトドア」のお話です。新潟の燕三条に拠点があり、アウトドアが本当に好きな人たちが選ぶといわれる、株式会社スノーピークの山井太(やまいとおる)さんにお話を伺います。野外フェスとかアウトドアを仕事にしている友人は、「アウトドア好きな人ほど、スノーピークが好き」と言ってます。「あそこの道具はすごい」というので、「道具」という言葉が自然に出て来たのに、はっとしました。でもお話を深く伺ってみると、山井さんが作っているのは「道具」だけではないようです。

<世界で一番キャンプをしている社長>

山井:みなさんこんにちは。いま御紹介いただきました、スノーピークの山井太と申します。よろしくお願い致します。

僕は、自分自身も非常にキャンプが好きで、だいたい年間で60泊くらい、一年のうちの2ヶ月くらいはキャンプ生活をしています。世界中のアウトドアメーカーの社長で、僕くらいキャンプをしている人はいないんじゃないかと思うくらいキャンプをしています。みなさん、普段の生活の中で、例えば風が吹く、とか雨が降ることを感じながら生活している人はすくないと思います。でも、キャンプの生活をすると色々なものを感じます。五感で感じます。そういう生活を、60日間すると、日本の場合そのうち35日くらいは雨が降り、10日は暴風雨が吹きあれるわけです。

自分の欲しいものを作っている会社がスノーピークなので、僕はSP以外のアウトドア製品は使えません。SP以外使えないので、10日間の暴風雨の中で僕が生存していてみなさんの前でお話ができるのは、ひとえにスノーピークの製品の品質が優れているからと思ってます。どういう風にたのしんでいるかということなんですけども、これはキャンプ場でひとりでキャンプをしているところなんですけれども、いわゆるオートキャンプというカテゴリーのキャンプを楽しんでいます。仕事でもキャンプしているんですが、仕事につかれたときもキャンプをする、ということをしています。

スノーピークは、RVでキャンプに行く、「オートキャンピング」のライフスタイルを作り上げた会社です。中心は、ドームテント、タ−プという商品です。僕は、キャンプの他に、「フライフィッシング」という釣りが非常に好きで、これは新潟の山形寄りにある、みおもてというすごく美しい川があるんですけど、その源流部によく釣りに行きます。これは、いわなです。自分で釣ったやつ。30cmくらいあるいわゆる「尺いわな」というやつですね。危ない谷にもいって、よくここらへんの岩で、落ちたりして危ない目にもあっています。これは新潟県のいわなです。非常に綺麗ないわなです。

僕のやっているビジネスは、アウトドアの愛好者の人たちが、アウトドアを楽しむ中で、自然の中にいって、「あ、ほんと愉しい」という自然の楽しさや、「自然って、大事なんだな」ということを五感で感じてくれるためのビジネスだと思っています。僕の会社で作っている製品を使った野遊びをしている方々の映像をまとめてきました。ユーザーの方々の笑顔をみなさんにみていただければ、と思います。

<スライド上映(鳥の声入り)>

スノーピーク社のテントやタ−プを使った、日本各地でのキャンプの様子。家族連れ、若いカップルなどが、笑顔で登場する。家族で料理をしたり、日がくれてランプが灯ったり、沢山の人が焚火を囲んでいたり、朝もやの中にテントが並んでいる様子も、とても美しい。

東京秋葉原が一瞬森の中に、みたいな感じで御覧いただけたと思います。

<お父さんの影響>

僕が、アウトドアを楽しむようになったり、今のビジネスを始めるようになったのは、多分父の影響だと思います。うちの父は、スノーピークという会社の創業者なんですが、ロッククライミングが非常に好きで、10代から20代にかけて、新潟に会社がありますんで、一番近い岩場というのが谷川岳なんですね。一の鞍という岩場に、毎週のように通っているような男でした。まあ、そういう人間が創業した会社なんですけど、親子関係の中で、僕も父の影響をかなりやっぱりうけていますので、小さい頃からアウトドアを楽しんだりキャンプしたりとかしていたのが、アウトドアが好きになった一番の理由かなと思っています。

<アウトドアとは何か>

今日はスロービジネスというテーマでのお話で、スローライフというのもありますが、「スロー」という言葉の中で一番大事なのが「人と人のつながり」なんだろうと思います。僕はアウトドアが本当に大好きなんですけど、なんで好きなのか。その一つの理由が、今のスローの説明にもあったように、それが、「人から人へと伝わってゆくもの」だからなんですね。それも、大事な人から大事な人へ。例えば、父から愛する子どもへ、あとは例えば彼がアウトドアが好きで、彼女を誘っていくですとか、大事な人から大事な人へ人伝えに アウトドアというのは伝わっていきます。そういう機会がないとアウトドアを楽しむということはなかなかないと思うのですが、そういう風に伝わるものだなあというのを日々感じています。

<商品の伝わり方>

スノーピークの製品の伝わり方も、非常にこれと同じような形になっていて、基本的には我々の製品のユーザーさんというのは。多分どなたかお友達が使ってらっしゃって、使っていただいた方がすごくいいという風なことをお友達に伝えるというように伝播し、口コミで広がっているブランドなんですね。今現在も、スノーピークの製品は、世界15ヶ国で販売されていまして、それも口コミで15ヶ国にもそれが伝わっている、という状況なんですけれども。

<ユーザーとしてものづくりをする>

先程見て頂いたように、僕は自分自身がアウトドアが好きで、父がアウトドアの会社をやっていたというせいもありますけれども、ごく自然にアウトドアメーカーで仕事をし、今社長をやっているわけですけれども、僕もそうだしうちのスタッフもそうなのですが、うちの会社で作る物は、例えば「今まで誰もつくっていないもの」、基本的には今いいものがあるカテゴリーには興味がない会社なんですね。ユーザーとして非常に不満を感じていたりですとか、もっとこういう風に使い勝手がいい製品が欲しいとか、そういうものがあった場合に「ないから作ってしまえ」という乗りで製品を開発している会社なんですね。

自分達がユーザーとして、ものをつくるという基本的なスタンスでビジネスをやってまして、みなさんも、お仕事されている方も今日は年齢層を見るとかなりいらっしゃると思いますけど、自分自身の本音でお仕事ができている方ばかりじゃないような気がします。スノーピークの中では、自分たちもユーザーとして納得がいかないものは出さないようにしよう、作らないようにしよう、ということでやっています。好きでやっていると愉しいとみなさん思われると思うのですが、好きでやっているので、楽しいんですけども反面、好きなことだから例えば開発をやれば切りがないんですね。

「もっといいものを作りたい」「もっともっと」となってしまって。うちの開発陣は、いつまでたっても開発をやめません。一つのものを期限内に作ろうということで、何処かで切らないといけないのですが。好きでやっているというのは、きりがないという意味でしんどい面もあるぞと。ビジネスとしてやっているので、アウトドア愛好者のためにものを作る中で、どこらへんで一線を引くか、という問題があると思います。

<修理をする>

例えば、スノーピークの製品というのは、すべて永久保証というものがついてまして、10年後でも100年後でも(会社があれば)、みなさんというかみなさんのお孫さんあたりがもってらっしゃって、製造上の欠陥でものが壊れたら無条件で無償で修理か交換をします、ということをやっています。それはわれわれもユーザーとして、自分達が道具を買って使っていて、壊れたら嫌ですよね。壊れないものを作りましょう。

これすごくあたりまえのことなんですけど壊れないからいい、というではなく、もっと高い時限で、もっともっとということを追求するのですが、最低限、永久保証がつけられる品質のもの、過去に何処の会社も作っているような革新的なプロダクツを世の中に出そう、ということでやっています。

その結果、基本的に何処の国に行っても、アメリカ、ヨーロッパ、アジアオセアニア地区。15ヶ国で販売してますけど。どこにいってもスノーピークのものは一番高いです。日本国内でも一番高いですけれども、欧米にいっても一番高いです。スノーピークのアウトドア用品以上に高いアウトドア用品はないんですけれども、逆に、本当にユーザーとしてものをつくりこんで、自分達の欲しい時限で製品を出している会社も他にないと思います。したがって、使った方々が何か今までの他社の製品と違うぞ、ということで心の琴線に触れたとか、そういうことで感動して下さった方々が、うちのものを伝えてくださって広がっていっている、というのが、僕らのビジネスの現状なんですね。それは「ものづくり」の部分で、もうひとつお話します。

<ユーザーとのつながり>

スノーピークのホームページ(http://www.snowpeak.com)でも、その模様のレポートが掲載されているのですが、SPで「スノーピークウェイ」というキャンピングのイベントをやっています。今年は、来月で最終回8回目が終わるのですが、北海道から九州まで8会場。実際、我々の製品を使ってもらっている消費者の方々と、僕も全部行くのですが、開発スタッフ、営業スタッフと一緒に焚火を囲みながら一泊や2泊でキャンプをする、というイベントをやっていまして、去年一年間で僕が実際にお会いしたユーザーさんの数は、約5000人弱くらいです。

およそ多分世の中の製造業 ものを作っている会社沢山ありますが、メーカーの社長や、開発スタッフが、実際に使ってらっしゃる方と4千人、5千人と会って、一泊でお話しをしているような会社って、僕は他には知らないんですね。僕の会社ではそれが毎年行なわれていて、今年で7年目になるんですが、どういうことが起こるかといいますと、うちの開発陣の作った製品がよかった場合に、彼らは直接消費者の方から、「あなたが作ったこの製品はすごくいいですよ」というフィードバックを受けます。

これは、ものを作っている人間にとって、非常に一番嬉しい瞬間なので、もし嬉しくなかったらものを作る資格がないわけなんで、うちの会社にはいて欲しくないと思いますし。逆にカタログ上でうたっていて、実際みてそれを買って頂いたお客さまが、「そんなに良くないぞ」と思った場合、激烈な文句がいきます。おまえの作ったもの全然良くないじゃんという言葉が直接工場にいって、金型を修正してスペックをよくしようと思わないと、これもまたメーカーで働いてはいけない人なわけです。

コンシューマの方々から僕の所にもメールが来ますが、スタッフのとこにも日常的に何十通もメールが来る 常時モニターされているような状態で、いいにつけわるいにつけ、いいことはいい、わるいことは悪いとフィードバックをいただいているという状態です。

株式会社という形態でやっていますが、なんのためにある会社かというと、アウトドア愛好者の方々のためにしかないわけですよね。その状態に素直に、アウトドア愛好者のためなのであれば、その方々が自由に僕や開発部に意見やフィードバックを出せるような会社。それが次の製品やサービスに生きていくわけですけれども、過去出したものに関する評価をいただきながら、次に何を作るかというアイデアとか、期待とか、そういったものをいただきながら、ビジネスをやっていますけれども。基本的に、色々な製造業がありますが、消費者の方々にスノーピークくらい近い会社はないのではないか、と思っています。そして今のそのうちの状態が、ほぼガラス張りで外から等身大のスノーピークというのが見ていただけているのかな、と思います。

僕は、個人のホームページを持ってまして、ヤフーでアウトドアというカテゴリをクリックなさると、サイトがすぐ出ます。サイトの名前は野遊びドットコムというものなので、もしよろしければ今日の話、面白くなかったぞとか、ちょっとよかったよ、とか気軽にメールでもいただければ、と思っています。

<好きなことをやろう>

そろそろまとめに入りたいのですが、自分自身が本当にアウトドアが好きで、今のこの仕事をやっている。現在社会人のみなさんもいるし、学生の方もいらっしゃると思うのですが、みなさんに是非伝えたいのは、「好きなことで仕事をしたほうがいいですよ」、ということです。もし今自分がやっている仕事が好きじゃなかったら、何が自分の好きな仕事なのかを見つけて、転職するか、もしくは今の仕事の中で自分が好きな環境というか状況を実現してゆくか。どちらかがいいと思います。別に全員転職するひつようもないと思うので。でも、自分の好きな仕事をやらないと本当の成果というのは残っていかないし、自分自身が楽しくないということは、誰も幸せにできないのではないかと思います。今現在好きだったらそれを愉しくやっていけばいいし、愉しくなければ迷わず何が好きなのかを胸に手をあてて感じていただいて、何か自分しか出来ないことが絶対一人ひとりにあるはずなので、そういう部分で仕事をされていったら世の中のためになっていくのではないか?と思います。そのことを一番みなさんに伝えたくて今日ここに来たので、是非そのことだけは、おうちにもって帰ってこれからの自分のお仕事を考えてみてください。

藤岡:山井さんヒトコトだけ、私は焚火台を持っているのですが、是非みなさんにも焚火台の話を具体的に、紹介してください。

<焚火台>

今あみちゃんがいってくれた焚火台は、本当はいらない製品だと思っているんですよね。でも、なんで作ったかというと、キャンプの楽しみの中で、さっきも画像で見えましたが、焚火っていうのは本当に素敵なことなんですよ。焚火をすると、人と人の心が近くなったり、大事な人ともっと大事な間柄になれたり、非常に素直な気持になったりとかするんですけど、オートキャンプが 非常にブームになってしまって、90年代に入ってから、キャンプ場が焚火の後だらけになっちゃった時期があったんです。

焚火をすると当然地面がこげますし、自然環境にインパクトを与えます。それでも、適正な回数、場所、TPO、後始末をすれば問題はないと思うのですが、人が増えて、モラルのないキャンパーも増えてしまっていた。キャンプ場がこぞって焚火を禁止した時期がありました。どこのキャンプ場にいっても「焚火はやってはいけません」となってしまったんですね。92〜93くらいだったと思います。僕はアウトドアが好きなので、焚火ができないのはアウトドアじゃない!と思って。 地面を焦がさずに、焚火ができる器具を作りました。折り畳みで、地面にたいしてはインパクトをあたえない製品です。それができてからは、何処のキャンプ場でも「焚火台」を使えば焚火していいよ、という風になっています。実際自然環境に出て行かなくても、生活だけしていても自然にはインパクトを与えているわけで、自分達が与えているインパクトを少なくしましょう。ノーインパクトにしましょう、という製品なんですね。

<まとめ>

藤岡:例えば自分がアウトドアが好きだったら、「アウトドアとはなんなのか?」、「大事な人から大事な人に伝えられてゆくものじゃなんじゃないか。」というところまで、好きなことの意味を掘り下げるようにして、焚火台とか他の製品をつくって、ユーザーさんに、自分が使う立場を忘れないで届けていく姿勢。

noasobi.com 楽しそうな人たちの顔がでてきて、でもそれを観ていると、ここにいて一番愉しいのは山井さんなんじゃないか、と思うんですね。「好きなことを掘り下げていく。」というのは同時に、何十通もフィードバックが一日届くのは愉しいと同時に非常に厳しい状況なのでは、と思うのですが、そんな中だからこそ、スタッフが開発をやめない、生き生きとした働き方ができるんじゃないかなと思いました。後半ではもう少しスタッフの方との関係なども、お聞きしたいと思います。

続いては、「非電化in秋葉原」です。最近私は、地震が来るたびに恐いんですが、今原子力発電所が日本にいっぱいありますよね。いのちを大事にしない発電なので反対、と思ってしまうのですが、やっぱり机のしたを見たり、この会場にもこうして、電気のプラグがからまっているわけです。そういう生活の中で、非電化、電気を全く使わない製品を発明している。非電化工房の主宰、藤村靖之さん。よろしくお願いします。
 
<非電化が注目されている>

藤村:こんにちは。発明家の藤村です。発明ってのはとても簡単な話ですからね。私の場合は、2週間にひとつぐらい発明するのかな。こんなことをもう30年もやっているから30×2週間に一つだから、まあ1000以上の発明をしているんですね。

最近4年間の中心のテーマで非電化製品ということをやりはじめたんです。で、この4年間で一通り発明が終わりましたんで、五月の連休明けに「愉しい非電化」という本を出したんですね。売れないかなと思って出したんですが、以外と売れた。本当に売れた。何万部なんていうと印税はいったんだから寄付しろとかいわれるのでいわないけれど、今まで私が25年間かかって随分本を書いてきて25年間かかって売れたよりもこの2ヶ月半の方が売れ行きがいいんです。私、本当驚いた。イイ時代になったんだなという気がしますね。愉しい非電化なんて本がどっさり売れるんですよ。希望が持て始めましたね。

今日はこの正しい非電化。「電気使わなくたってこれだけのことができるんだ。」という実例をお話しながら、それを通じてスロービジネスの可能性、いろんな考え方をすればスロービジネスなんて無限の商材っていうか可能性があるんだ、ということをみなさんに実感していただきたいと思います。非電化ってことを実感するために、日本テレビの関係者はいないですよね。大変品の悪い会社なんですよ。これはね、私のセンスじゃない。日本テレビのセンスなんですが。ちょっと覚悟して観て下さいね。

【日本テレビ 情報ツウ「エコ企画シリーズ」】
家庭の高額な電気料金に驚いたレポーターが「節約したい」ということで、葉山の別荘地にある非電化工房(電気を使わない古い道具が集められている)を訪ね、藤村さんの発明したいろいろな非電化製品を見せてもらう番組。

出てくるのは、非電化冷蔵庫(自然対流を利用)、非電化除湿器、夜だけスローエアコン(気化熱を利用)、非電化掃除機(ほうきの原理を利用)。非電化ラジオ、樹の箱にガラス繊維を貼った保温箱など、昔の人の技術や、自然の原理に学んで作られた発明の数々。最後に、レポーターは蝋燭の光りの元、非電化製品で作った夕御飯をたべ、家庭で炊飯器が使う電力は原発一基分以上と知る。

藤村さんの言葉で印象的なのは?
*「それほど画期的ではないですけどね。」「ほどほどならできる。」」
*「電気は確かに必要なんですけどね、不必要に快適便利を求め過ぎちゃっている気がしてしょうがないんですね。電気じゃなくちゃ生活できないと思い込みすぎちゃっている人が、ずいぶん増えている気がするんですよね。」
*「除湿器が干せなかったらどうしたらいいと思います?」
「あきらめてもらうんです。」

藤村さんの非電化発明は「電化製品は、今の日本の生活にあっているのだろうか?」という疑問から出発した。非電化の発想を知ることで、エネルギー問題をもっと身近に考えてもらえれば。また、「ほどほど快適便利」を愉しめる人だったら、こういう選択肢もある。と提案している。

また、その視点は「このまま世界中で電気製品の使用量が増えると、電気の供給が間に合わなくなる。」という世界的な視野に及び、モンゴルでは今年、藤村さんの手により、非電化冷蔵庫が実用化されます。遊牧民の貴重な食糧を長期保存が可能になります。

藤村: 今のビデオで夜になるとランプをつかってたけど、あんなことやっているわけないじゃないですか。めんどくさい。いやだっていうのに、どうしてもやらせて欲しいという、そういうテレビ会社なんですね。

<夜だけスローエアコン>

今でてきた、非電化夜だけスローエアコン、というものをちょっとお見せしますね。これは、模型なんです。このように、室外機(部屋のソトにおいていただくんです。太陽の当たる所。)と、こっちが室内機になってます。これの実物は、厚さは同じで、大きさは4倍くらい。昼間、太陽の熱がさんさんと当たるでしょ。太陽は大変なエネルギーを持っていますから。これでもってこの中の黒の板の奥の方にちょっと青いのが見えるけど、ここに除湿剤がたっぷり染み込ませてあるんです。これが太陽の熱が当たると2時間くらいで湿気を全部吐き出すように作られています。昼間中かかって太陽のエネルギーで、思いっきり乾燥した状態を作っておくわけです、除湿剤がね。

そして夜になると、(昼暑いときはどうするかって、外出て水浴びしておけばいいじゃないかってそういう考え方なんですね。)夜になるとこっちから空気を吸い込んでいきます。吸い込むにはちょっとだけファンを使っています。これで7Wくらい。実物だと30wくらいつかうかな。だから完全な非電化ではないんだけど、30Wくらいでしたらこれくらいの太陽電池でも十分まかなえるわけだから、「まあ、いいのかな」という気がします。エアコンのざっと50分の一くらいの電力ですね。これで吸い込んできて乾燥した空気です。乾燥した空気は湿気をすわれると発熱反応で暖かくなっちゃいますから、ゆっくり裏側をおとします。そうするとこれが、熱交換機になっているから、ソトの温度と同じくらい、ここに大変乾燥した空気、総体湿度でいうと25%くらいを持ってきて、ここで一旦水をくぐらすんです。そうすると総体湿度100%近くの空気になります。つまり水が蒸発するわけですね。蒸発するときは、気化熱を奪う。気化熱というのはすごいですよね。だってほら学校で習ったでしょ。一気圧100度だったら1gの水が蒸発するときには539カロリーの気化熱を奪う。あれがものすごいんですよ。だからここで水をくぐらすと思いっきり冷たい空気ができます。簡単ですよね。これは模型実験だから、そのまま出しちゃってますけれど、実際にこのまま出しちゃうと湿気も部屋の中に出てきちゃうから、実際には湿気は外に吐き出して冷たい部分だけをもっていきます。そんなに難しい話ではないんです。これでスイッチを入れると、ここから、ちょっとひんやりするでしょ?

藤岡:あ、本当だ。ちょっとではなくけっこう涼しいです。来てみますか?

藤村:でしょ?だから冷やすことなんてそんなに難しくないですよね。 だからね無理矢理フロンガスを使って、今のエアコンというのは無理矢理20気圧を4気圧、20気圧を4気圧と、こういうことをやっていくわけですけど、だから膨大な電気を使う、そして熱をソトにほうり出す、地球はあったかくなる、とこういうことになっているんだけれど、まあ、夜だけ寝苦しいときに、ちょっと少し涼しい思いをあじわいたいだけだったら、こんなことでもできるのかもしれない。それでこういうものだったら、1000台まとめて作れば、2、3万で提供できるんじゃないだろうか?エアコンは2、30万円だけど。

<スロービジネスだけのマーケット>

藤村:もしかしたら、みなさんがこれからスロービジネスということを考えていくときに、こういうことも一つのヒントだと思うんです。今までの社会はね、もう沢山売れそうなものを沢山作って、沢山捨ててっていう、これが今までの時代だったんだけど、もしかしたら、「エアコンをできれば使いたくない。だけど、夜寝苦しいときだけでもちょっと涼しければうれしいなって人が、もしかしたら1000人にひとりくらいいるかもしれないじゃないですか。でも1000人にひとりだって、日本中全部あわせれば10万人。10万人というのは大企業は絶対に手を出さないちっちゃなマーケットだけどみなさんにとっては10万人は巨大なマーケットなわけだから、そういう人たちと、エアコンなんて使わなくてもなんとかできないかな、そうだこういうのがあるじゃないか、とこういう風に考えていくと、こうスロービジネスの発展性というか、可能性は大変大きいと思います。これからはね。まだ時間ありますか?

藤岡:まだあと10分くらい。この辺まで涼しいです。

<ローソクラジオ>

藤村:じゃあ次はこれをやろうか?ローソクでラジオを鳴らす。キャンドルラジオ、あるいはロウソクラジオというのを作っている。もう御覧になったことある方もいらっしゃるかもしれませんが、これ、私の権利なんです。特許だとか商標だとか。それは、ローソクを使って、熱伝素子っていう、 熱を加えると電気が起こるという、まさにハイテクです。最近もうちょっと面白くしてみたくなったんです。これローソクは、どういう蝋燭かというと、中村さんにもらったローソクなんですね。中村隆市さん蜜蝋が好きで。中村隆市さんのローソクは、ほんっとにできが悪い、炎が本当に小さい。
 
藤岡:「ほどほどでいい」んじゃないですか、藤村さん?

会場:(笑)

藤村:ほどほどにもー、限界がありますね。

会場:(爆笑)

藤村:これはね、スターリングエンジンという私が好きなエンジンです。この外から燃料を燃すと回転するわけですね。薪でも蝋燭でもゴミでもいい。貴重な化石燃料を使う必要がないわけですね。これでもって、ちょっとあたたまるのに時間がかかるから、とくに、蝋燭ができが悪い。

藤岡:しつこいですね。

会場:(笑)

藤村:ちょっとしつこかったですね。これでちょっと早くまわり始めますね。熱エネルギーを、エンジンに変える。スターリングエンジン。文化系の人が日曜大工だってできるんです。これで、まわり始めた。実はここに発電機がついているんです。発電機がこれを回しているんです。

藤岡:これは蝋燭の熱で、まわっているんですか?後ろの方の人、もしよければ、ちょっと立ってみて下さい。

藤村:このささやかなロウソクの中のね、

藤岡:え?とまらない??(蝋燭を外したのにモーターが動いているから)

藤村:これはまだ惰性でまわっています。決して何処かから電気引っ張っているわけではないですよ。

会場:笑

藤村:10%くらいしか熱を使ってないんですね あとの90%は空気を暖めてちゃっているんですね。これでまわってきたでしょ。

〜ラジオの音が聞こえる〜 

藤村:感度(ラジオの)が悪いですね。感度が悪いのは、私のせいではなく、このラジオを作った会社のせいですね。

藤岡:人には厳しいですね。

藤村:そう、人に厳しく自分に甘くすることが必要ですよ。そうじゃないと発明家というのはやってられないですね。

観客:(爆笑)

<仕組みを知ること>

藤村:まあいいや。ラジオが鳴ったじゃないか。つまりここで面白いことは、蝋燭の火は、蜜蜂が一生懸命運んできて作った蜜蝋ですね。蜜蝋に火をつけたら炎が起きた。熱エネルギーです。熱エネルギーをここで、回転、気化エネルギーに変えました。気化エネルギを、発電機で、電気エネルギーに変えたんですね。電気エネルギーがこう来て、一方では電波がどこからか飛んできているわけですね、そしてその電波を電気のエネルギーで増幅して、そして、スピーカーを振動させる、スピーカーが振動すると空気が振動する。つまり音ですね。空気が振動すると、こまくが振動する。

鼓膜を振動させると、人間が「あ、音だ」と思うわけですね。だからこの中で、いろんなエネルギーが次々に変換されていくわけです。で、このプロセスが分かった方が面白いと思うんですね。

今、世の中っていうのは、工業化が進み過ぎて なにが起こっているか分からないんだけどとにかく製品ができている。ますます生産者と消費者がどんどん離れてしまって、離れてしまうとついい生産者は儲けが優先になってしまって、生産者は不本意ながら悪いことをしてします。

私の姉の旦那は、もう誰でも知っている有名な製薬会社の役員をしているのですが、風邪薬も作っているのですが、自分と自分の娘が飲む薬は絶対自分の会社の風邪薬を飲まないようにしています。で、夜、見つかると大変だから、こっそり街の薬屋にいって、別の薬屋の風邪薬を買ってくるんですね。絶対自分の娘には飲ませない。 ところがね、私の家にはね、段ボール一杯送ってきます。つまり愛情の範囲が自分の娘までは届いているんだけど、私までは届いていない。人間のやさしさが短くなっちゃったんですよね。だからもっと人間関係に、もっと温もりが伝わっていいですね。

そのためには、ひとつのアイデアは、生産と消費をもっと近付ける、あるいは、生産のプロセスがよく分かる商品にしてあげる。販売する人が一緒になって楽しむ、こういうのは スロービジネスという概念じゃないと不可能ですね。 ファーストビジネスでは、もう有名な女優を使ってチャラチャラすごいでしょといって強引に買う気にさせている。こういうことを考えると、私はスロービジネスというのは、可能性が大きいと思いますよ。

これは、エネルギーを実感できるからね。熱エネルギーが気化エネルギーになった。熱エネルギーが見て分かる。目と肌で感じられる。気化エネルギーは持つことによって、あ、これだけの気化エネルギーになっているんだ。ちょっとね、蝋燭がたれちゃうんだよね。蝋燭の太さに比べて芯が細いんですね。この蝋燭はね。ちょっと中村さん気を付けてくださいね。

会場:(笑)

藤岡:では、もう一つだけ。あと他に、(袋の中に)何が入っているのだろうとすごく気になりますね。

藤村:このラジオはもう御存じの方多いですね。手捲きラジオです。さっきのラジオと同じですね。こういう風にして一分間捲けば、一時間聞ける、というただのラジオです。私はこの『愉しい非電化』という本の中でこれはものすごくほめたんです。同じものをソニーが出しているんですけど、ソニーの人いらっしゃいますかね?

藤岡:もう居ても手あげられないですよ。

<良い会社を応援する>

藤村:いらっしゃらないですね。隠さないで下さいよ。ソニーはバカだってこの本の中でいったんです。バカという言い方はしていないけど、読む人が読めばソニーはバカだとしか聞こえないような書き方をしました。これを作ったのはタイチという名もない貧しい会社です。タイチは偉い、なぜかというとソニーはやっぱりソニーだなと思います。

手巻きでも使えるけど、商用電源でも使えるけど、乾電池でも使える。つまり、誰でも使えるという、そういうところを狙わざるをえないんですね。でもタイチはちっちゃい会社だから手巻きしかできません。商用電源をつなぐ所もバッテリーをつなぐ所もないんです。私はこれがいいといった。つまり無駄なことをする必要が何処にあるんだ。こういうものであればこそ、50年でも持つわけだから、これは偉いといった。

この本で誉めたらこれの売れ行きがあがったんです。今この会社からものすごく感謝されています。だからこのラジオが欲しければ私を通して買って下さい。びっくりするほど安く買えます。

<木製ラジオプロジェクト>

だけど一つ気に入らないことがある。せっかくエコロジーなのに、プラスティックじゃないですか?なぜプラスティックなのか?だから私が今進めているプロジェクトの一つは、木製ラジオ。まだ外味しかできていない。今これの中身を入れ替えて、本当の木製ラジオを作るプロジェクトをやっています。私の塾の生徒とやっている。塾の生徒といってもみんな企業経営者ばかりですが、木工会社をやってらっしゃる方が福岡にいらっしゃるので、その方と一緒に進めてます。これは、たももの樹で対した気ではないのですが、日本では銘木の端材が産業廃棄物として捨てられまくっているんです。どれくらいの大きさかというとこれより少し大きいくらいのはざい。その銘木の端材をただでもらってきて、美しいのの極みの手捲きラジオにしてあげる。そして、これ見ていると捨てたくなるでしょ。これ秋葉原にうっているときは、買いたくなるデザインですね。思わず買っちゃう。デザインには思わず買いたくなるデザインと、使えば使う程味わいがでてきて捨てたくなくなる、壊れたら直してでも使いたくなるデザインがあるんですね。これは秋葉原でザインです。明らかに。 私はそうじゃなくて、使えば使う程味がでて、もっているだけで「ほっ」とため息が出るデザインを作りたいんです。こわれたら直したくなるような。それを今作っています。何処で売れるのか。秋葉原じゃ絶対売れないですね。だけどみなさんはこういうセミナーに来たくらいだから、とてもエコロジーとかスローということに志が熱い人ですね。そういう人ってのはみなさん友だちが沢山いらっしゃるはずそういう中で、50年くらい捨てたくなくなる。子どもから孫まで。捨てたって土に戻るんだから。悪くないのかもしれない。こういうのもスロービジネスの可能性。

<まとめ>
藤岡:販売の仕組みも、みなさん聞きたいと思うので、後半部分で詳しくお話いただきます。非電化工房に見にいってください。プラスティック製品が一つもないとお聞きしました。今日は見れないかも知れませんが、あとで本もありますので残りのものは本や工房でお聞きください。非電化除湿器に関して雨のときはどうするんですか、といったときに「あきらめてください」嬉しそうな顔が私は忘れられないんですが、それが私は素晴らしいと思うんですね。発明は、「天才」でいらっしゃるという、頭の中で組み立てられる技術だと思うのですが。すごいと思ったのは、「掃除機、って本当に意味があるんだろうか?」プラスティックは綺麗なんだろうか?と疑ってみる姿勢がすごいなあと思いました。そして「これならできる」という消費者に対して「ほどほどの点を提案しよう」、ということまで結び付けている、ということに関しても後半でもっと追求したいと思います。


続いては、福岡からいらっしゃっている中村隆市さんです。(株)ウインドファーム、15年間南米のブラジル、エクアドルのフェアトレードを実践されて、その過程で、日本と南米の地域づくり、環境運動に携わってらっしゃいます。よろしくお願いします。

中村:藤村さんに色々誉めていただきました中村です。非電化の除湿器、雨だったらどうするか?いいアイデアがあるんです。諦めないんですね、私は。2台買ってもらうんです。今、有機工業運動というのを始めていますが、あとでそのこともお話したいと思います。

普段2、3時間で話していることを20分で話すのは難しいのですが、どうしてフェアトレードをやるようになったか?ということを話したいと思います。

<おじいちゃんの死から>

福岡で生まれました。子どもの頃、物心ついた頃にスラムに住んでいました。川の土手の番外地に、勝手に家を建てて住んでいました。5歳の頃、おじいちゃんが病気になり、6歳の頃に亡くなりました。火葬場で焼かれて、骨を箸で拾う、という体験をしました。そのとき初めて「人間というのは死ぬんだな」ということを強く意識したんです。命あるものは、人間に限らず必ず死ぬ。生きても生きなくても結局死ぬ、と結果は同じなのに、どうして生きなくてはいけないのかということを6歳の頃に考え始めました。その答えは自分の中からは出てきませんでした。小学生、中学生、と出てこなかったわけです。そのうち、不良になった。博多の中洲というネオン街で、不良のバーテンをやっていました。非常に気に入った仕事だったんです。若い女性に囲まれて。あるとき急に映画が作りたくなりました。今村昌平が映画の塾を作るというんで、福岡から横浜に出てきたんです。その映画の学校で、たまたま演出のゼミに記録映画のプロダクションで働いていた人がいて、その人に誘われて映画を観にいきました。元々劇映画を作りたくて、初めて観たその記録映画が、水俣病の映画だったんですね。水俣病。被害の大きさ以上に私がショックを受けたのは、胎児性の水俣病の患者さん。お母さんが水銀に汚染された魚介類を体内に入れて、胎児性水俣病の子供達は歩くこともできない。お母さんは比較的元気なんですね。なぜかというと、水銀を赤ん坊が胎内に蓄積したわけですね。赤ん坊がお母さんを救ったともいわれています。

<水俣の記録映画>

強い印象を受けたのは、私の母親が熊本出身。1950年代は胎児性水俣病の患者さんが沢山生まれた年なんです。ですから私自身が胎児性の水俣病で生まれてもおかしくなかったわけですね。そういう風に不良をやっていた人間が、公害、ということを初めて知った。チッソという会社だけではなく、政府が人間のいのちよりも経済成長ということを優先させた。そういうことを政府がやるのかということを初めて知って、それをみて公害とか環境の問題に関心を持つようになったんです。

<有機農業に携わる>

有機農業をやろうと思い生産者になりました。有機農産物を作って販売。ずいぶん前。農産物の見た目を重視して、安全性や美味しさは2の次だったんですね。消費者の意識が変わらないと有機農業広まらないな、ということで、生協につとめて、7年間 順調に運動を展開。チェルノブイリの原発事故が起きて、8000キロ離れた日本にまで放射能が来た。有機農業をやっていた人の畑も放射能で汚染。日本人のお母さんの母乳からも、検出されたということがありました。大人より子ども、子どもより乳児が放射能の影響を受けやすい。その赤ん坊の唯一の栄養源である母乳からも放射能が検出された。

<放射能汚染の問題>

こういう思いは、今の非電化の運動をすすめることにもつながっています。放射能汚染された食品も沢山輸入されてきました。それで、消費者の間から放射能汚染食品を規制すべきだということで、370ベクレル以上に汚染されたものを輸入しないと政府が決めたんです。私のいる生協では37分の1の10ベクレルという数字を設けた。子供たちの健康を願うお母さんたちが作った生協ですから、子どもたちに放射能汚染の食べ物を与えたくない。

カロリーベースで60%輸入している日本が、放射能に汚染されているから、大量の汚染食品はいらないと拒絶したわけですね。それは何処にいったのかというのを調べてみたわけですね。そうしたら、発展途上国といわれている国にまわっていた。私は食べ物というのは、地場生産、地場消費が基本だと思っていますし、それは間違っていない。しかし、放射能汚染食品が途上国にまわることに疑問を感じた。ただでさえ健康状態が良くない所に汚染食品がまわって、子どもたちがそれを食べてさらに健康を害するというようなこと。

そういう社会の中で自分が生きていて そのまま同じように続ける、ということに疑問を感じた。原発は人類と共存できないと思っていましたから、脱原発運動にもっと力を注ぎたくなった。そして、チェルノブイリの医療支援や途上国の人たちとつながるようなことをやりたいなという思いがつよくなって、生協の中でそれを続けていくことが難しくなったので、有機農産物産直センターを生協を退職して作ったわけです。そのセンターの仕事の一つとして、途上国のものを扱う、ということを始めた。

<コーヒーのフェアトレード>

ビデオ クローズアップ現代 「特集:スローライフ」
8年前にブラジルでひとりの生産者にあったことがきっかけ。利益を追うだけではなく、消費者の信頼を得て、生産者の利益も保証できるスロービジネスを目指している。ブラジルの南部、24年前から農薬を一切使わない(化学肥料ではなく有機肥料を使う)コーヒー栽培に取り組んでいるカルロスさんのコーヒー。

コーヒー:国際相場が100ドルに下落していたが、経費140ドルにカルロスさんの利益40ドルを上乗せして180ドルで購入。コーヒーは一万人以上に売れている。

中村:今のは、ジャカランダ農場のカルロスさんですが残念ながら、昨年お亡くなりになりました。今年の5月にマッシャード市に招待を受けまして、行ってきました。有機コーヒーキャピタル(首都)宣言、というのをしたんですね。最初は、無農薬でコーヒーができるはずないと、みんなに言われたんですけど、今は、ブラジル全土に有機コーヒーが広がっています。

ビデオ 素敵な宇宙船地球号 エクアドル
北西部チョコの森での、霧雲林。森林栽培のコーヒーの話。畑や牧草地のために森を切り開いた。AACRI。コーヒー生産者への指導、環境とのバランスのとれた森林農法。木陰での栽培と、一度畑になった場所を杜に再生する。良質なアボガド、テューガ。いくら国際相場が下がっても生産にかかる原価は保証する。コーヒーの貿易は、南北経済格差を象徴。世界的な価格の暴落。コーヒーを飲むことが、生産者の生活を助けて、森を守ることに役立つ。

<まとめ>
藤岡:今、映像で出てきたエクアドルの地域に、私も中村さんと行ったりして関わらせていただいているので分かるんですが、みんな日本人をみると「ナカムラ」と言ってくるんですね。小さい子からよぼよぼのおじいちゃんまでみんなに有名です。それが、福岡に拠点を置かれている、エクアドルやブラジルの地域と有機コーヒーキャピタル宣言をしたり「村長さん」みたいな仕事だなあ、と思っています。

地域と、コーヒーの貿易を通して、つながることでより豊かにしていく。豊かに、とは今あったように、森の生態系を豊かにしていったり、人々の暮らしを豊かにしていったりする。福岡の会社も、1/3くらいがNGO活動とか、環境運動を会社の中でやっていたりですとか、それから実は秘密の畑があって、仕事の合間にそこを耕しにいくなど、そういう働き方をして日本の社会もよくしようという活動もしてらっしゃるので、後半はそのお話をお聞きしたいと思います。


藤岡:後半のディスカッションの前に、今日お呼びした3人の方は、20年とか、30年だとかいうキャリアがあって、長年スロービジネスをやってらっしゃる方なのですが、私たち若い世代は、既に「フェアトレード」という概念はもう学生のときにあったり、アウトドアという概念が生まれた時からあったりと、少し違う環境で育ってきわけです。彼らのようなロールモデルがいる私達の世代のスタイルとして、どうやってスロービジネスから色んなことを吸収していこうかな、と模索している個人的な活動の話しを5分くらいにまとめてお話しさせていただきます。

私は、スローウォーターカフェ有限会社という小さな会社をやってまして、中村さんのビデオで観て頂いたような、特別な森がエクアドルに4種類あるのですが、そういった地域の人たちが作っている商品をフェアトレードで輸入して販売する、という仕事をしています。先程ビデオで出てきたように、男の人たちは森でコーヒーを育てることができるようになったのですが、同じ地域の女の人たちは、例えば飴を買うのにも、旦那さんに伺いをたてないといけない、家事労働などで平等に働いていても現金が介在すると社会的な立場が低いという状態が続いていました。また、鉱山開発に地域ぐるみで反対しているために、教育や医療などの基本的なインフラの整備が、政府によって意識的に遅らせられている、という地域の問題もありました。そんな中で、女性が子どもの教育や緊急、予防医療に使うための現金収入を得るために、元々地域にあった、このカブヤという植物素材を使って、帽子ですとか、バッグを作るようになりました。

元々は、こうしておじいさんとおばあさんが端と端を持って縄をない、家畜の紐や鞍や作物を入れる袋を作るのに使われていたのですが、こんな辺鄙な地域にまで、ナイロンのロープや、農業用の袋、藤村さんに言わせれば美しくないプラスティックの製品が入ってきてしまって、その習慣、技術が途絶えそうになっていた所でした。

そのプロジェクトは現地に住むサンディーという人の提言で始まったのですが、私はデザインを現地の友だちと話し合って製品開発しています。先程藤村さんが原発の話をされてましたが、日本にはなんと自動販売機が555万台もありまして、みんなが自販機を使うのをやめてそれらがなくなれば、原発が2基必要なくなる、といわれているのですね。そういう風にどんどんエネルギーを使いすてにするライフスタイルというものが、先程コーヒーの話で出てきたような開発問題を引き起こしているんだと思うので、水筒を広めようというのをやっていて、こうして同世代の若者と、エネルギーを無駄にしない粋なライフスタイルを提案するための商品を作っています。何年かかかってゆっくりこんな形になりました。染色は全て自然染色です。作っている子たちは、新しい色を出すための素材を探すことを通して、近所の森をより深く知るようになっています。

これは先程ビデオに出てきた国分寺のカフェスローで、私は立ち上げに関わったのですが、こんな風に若い人たちに共感してもらうやり方で、水筒を持つスタイルを広めようとこの商品を販売してくれています。もっと若いガールスカウトの子たちもこうして使ってくださって、使うだけではなくこの商品と日本による開発問題についての紙芝居を作って他の地域のガールスカウトのグループの子にも自動販売機を使うことについて考えてもらう、といったように、環境教育にも役立っています。

これがすごいんですよ。山井さんの新潟の燕三条の水筒です。実はスノーピークの製品開発部の方のアドバイスをうけながら作ったものなのですが、国産の水筒です。今、水筒のほとんどは中国産になってしまっているんですね。でも、これだけは残っていた。何がすごいのかというと、抗菌のためのフッ素加工がされていません。代わりに、三条の伝統にある金属の磨きの技術で、内部をすごく丁寧に磨いています。スノーピークの開発部の上原さんという方が、水筒のことを製品のことから業界の仕組みまで、かなり掘り下げて調べて下さいまして、実は、フッ素とステンレスは愛称が悪いのにフッ素加工をしてしまっているということが分かりました。これは、スローではない、ファストな選択で、そうしてしまえば効率がいいしコストも落とせるから、ということが分かりました。水筒の筒の中からそういう世界が見える。それを元に戻すだけでなく、キャップの金型が少し甘かったのを、もしかしたらそれが中国に進出できなかった一つの原因かもしれないのですが、その企業にとってもよい結果になるだろうからと、金型を変えることを掛け合いにいってくださって、と、大変有機的な関係の中で作られた水筒です。
もう一つの特長は、象印でもトラのマークでもなく、ハチ鳥だということです。

エクアドルのキチュア族に伝わるお話なんですが、ある時、アマゾンの森が燃えていた。大きくて強い動物たちは我先にと逃げていった。 しかしクリキンディ(金の鳥)と呼ばれる小さいハチドリだけが、そこに残った。そして、 口ばしに1滴ずつ水を含んでは、飛んでいって燃えている森の上に落とした。また戻ってきては、水滴を持ってゆく。それを繰り返すクリキンディを見て、大きくて強い動物たちは、馬鹿にして笑った。「そんなことをして、森の火が消えるとでも思っているのか」。クリキンディはこう答えた。「私は、 私にできることをしているの」マイケル・ニコルさんというカナダのアーティストが描いてます。

時間がないので、どんどんスライド流して下さい。先程のコーヒー園ですね。私達の世代でできることは、中村さんたちの作った関係をずっと有機的につなげていくことだと思うので、同世代人たちにこちらからは、コーヒーを私達はこういう風に飲んでいて、美味しいですよ、というのと環境のことを考えるきっかけにもなっている、ということを伝えるように、向こうからは、生産現場のこと、コーヒーや森のために働く時間について教えてもらったりという試みをしています。これはむこうで生産者と一緒にカフェ出店をしたときの画像です。

あとは、こういったオーガニックコットンのTシャツでメッセージを伝えようというのをやっていまして、今日もこの会場に着ていらっしゃる方がいらしてとても嬉しかったんですが、背番号9のTシャツ、憲法9条の9を増殖させようという試みなんですが、作っています。世界で一番栽培に農薬を使っているのは綿花です。枯葉剤をまいて、本来の植物の時間をきり縮めて収穫した綿の服を私達は着ているということの中で、オーガニックなコットンがもっと広まれば、ということを考えたりしています。

藤岡:あれ、中村さんは何処に居ますか?

中村:「はい、あ、お色直しを」(9条Tシャツを着て登場)

会場:(爆笑)

藤岡:うわっ、ありがとうございます。前半にお聞きしたお話では、ご自分がもともと大好きなことの意味を掘り下げて今の働き方に行き着いたこと、本当に意味のあるものや必要なものを考え直す姿勢、そして、商品のやり取りを通じて、地域づくり、お互いの文化を高めるというような、お3方のビジネスのスタイルついて学んできましたが、後半ではもう少し掘り下げてお聞きすると同時に、そのビジネスの快楽に関する、気になる質問に答えていただきます。

まず、先程最後に、藤村さんが「大企業にはアクセスできないターゲット」とか「大企業にはつくれないつながり」というお話をされていたのですが、スロービジネスのターゲット、というかお客さんのことについてのお話を伺おうと思います。まずは、有機工業の販売の仕組みについて、もう少し詳しく教えてください。藤村さんお願いします。

藤村:有機工業運動というのは、中村隆市さんの造語なんですよ。中村隆市さんというのはとても下手なダジャレをいう人なんですが、これは、ダジャレなしの、まともな言葉を作られました。つまり、今の工業製品というのは、昔はそうではなかったんですが、だんだん年が経つにつれて、工業製品が工業化されすぎてしまって、消費者の手からどんどん離れてしまいましたね。そして企業は、売りやすいものを、大量に作って、そして大量に使って、大量に捨てて、という病気みたいな状況になってしまっているんですけど。という中で「なんとかできないか」と、中村さんと考えたんですね。いいものを、少量でも、あるいは力も金もないひとが世の中に出すことができないだろうかと。

私達の時代は、西暦2000年まで、「名もなく貧しく美しく」という人は、工業製品を出すことはできなかったんです。ですから、私達が目指してしまったことはついついやっぱり権力を持とう、筋力を持とうと。まず、権力者、筋力者になってからいいことをやろうと思った。ところが、権力者とか筋力者になると、最初に考えていたいいことをやろうというのは忘れちゃいましてね、みんなと同じように悪いことを始めてしまうわけですね。こういう時代がずっと続いてきたわけですけれども、そろそろもう21世紀になって筋力、権力で、自分の欲望で人を支配しようという、そういう2000年も続いていた時代がやっとそろそろ終わるかもしれない。まさにインターネットの時代ですね。ネットワークの時代。「共感がエネルギーを生む時代」なんだから、ではその「共感がエネルギーを生む」。そのエネルギーをベースにして、お金も筋力もなくても、いいものを消費者と、消費者だけでは無理ですよね、生産者と、生産者だけでも無理ですね、日本中の中小製造業今大変困り果てているんです。それから発明家だけでも無理なんだけど、それを生産者、消費者、発明家が一緒になれば、できることがもしかしたらあるかもしれない。

例えば、さっき御紹介した非電化除湿器、あれをね、500台まとめて作ると、福岡の中小製造業なんだけれども、うちの塾の生徒のところですけど、1万5千円でできるんですよ。それでは、中村さんと相談して、まずあの非電化除湿器を、500台予約注文を頂こう、みなさんのような人からね、「いいじゃないか、これだったら一緒に是非世に出してみようよ」、という人に一万5千円で予約していただく。「予約」っていったってキャンセル自由の気楽なものなんだけれど。そして500台予約注文が集ったら、1万5千円が原価なんだから、私が750万円その中小製造業の人に前払いで払っちゃう。そうするとその中小製造業の人は嬉しいですよね。原価といったって、社員の人件費から何から入ってますから。1万5千円でできたものを、直接消費者に届けてしまう。そうすれば、たった500台で、工業製品が世の中にデビューできるんです。今の世の中ではこんなこと、ほんっとに不可能なんです。やっぱりね、10万台くらい広まらないと、デビューできないんですよ。つまりは大企業の仕事になってしまうんですね。そして10万台まとめて作ってしまったんだから、何がなんでも売らなきゃいけない、売らなければいけないから、あの手、この手となる。だからこれをねえ、ちょっとやってみようかな、と思って今やり始めているんです。除湿器は今、403台まで注文が集まりました。あと今日みなさんの中であと97人、手をあげてくだされば、もう今日めでたく500台到達するんだけれど。そういうやり方を「有機工業運動」と中村さんが名前をおつけになって、今実験的に進めています。

藤岡:インターネットのホームページで、申し込みができるんですよね。名付け親の中村さんはどういうことから、その流通の形を提案したんですか?

中村:さきほど有機農業を自分でやったという話をしましたけど、今、有機農業というのは日本でも大分広まってきましたけど、やはり、25年以上前は、本当にひとにぎりの消費者と生産者が提携して、初めてそういうことがやれるようになったんですね。同じようなやり方を、何も農産物だけではなくて、工業製品でもやってみようということです。

藤岡:なるほど。そういう昔の人が既にやっていたネットワークの作り方の中に、ヒントを得るという方法もあるんですね。もうひとつ私が聞きたいのは、「支配から共感へ」と藤村さんがおっしゃられていて、「マスメディアにぽーんと大きな広告を出すのではなく、人々の共感でスロービジネスが広まっていく」というビジョンを投げられたと思うのですが、それで思い出したのが、山井さんのスノーピークでは、会社ではなく、ユーザーの方が作っているファンサイトが沢山ありますよね。

山井:はい。本当にこれは大変幸せなことだと思うのですが、今スノーピークの製品、たった一個の製品。たとえば、トラベジーノというホットサンドを作る器具があるんですね。そちらの、『トラベジーノ・ファンクラブ』というサイトがあったりですとか、それから、日本製のダッチオーブン。山形の鋳物で漆を塗って作っていて、これが全然量産できなくて、月に20個くらいしかできないんですよ。今2年先くらいまで予約がうまっていて、もう今予約注文中心に展開しているものなんですが、日本古来の鋳物の技術を用いたダッチオーブンなんですが、そちらの『ぶんぶく会』、というサイトですとか。全然スノーピークの方で、作ってくださいとか言ってるわけでないのに、使い手側の方から、「僕はこの製品が好きなので、こういうサイトをやらせてもらってもいいですか?」ということでお話があって、今は色々お話をさせていただいて公認サイトということになっているのですが。メーカーではない、使い手側の人たちが製品についてのサイトを運営してくださっていて、例えば両方とも料理の器具なので、例えばレシピをそこに御自分たちがアップしていって、どんどん共有のお料理の使い方を載せてみなさんで供給しあう、ですとか、インターネットだけではなく、年に何回かオフ会をして集って交流をしていくということが実際に起こっています。

藤岡:広める過程も有機的というのに、有機工業運動とか、有機というコンセプトを使うことの、中身が見えていくんじゃないかなあと思いました。

みなさんキャリアが長いですよね。今でこそ、LOHASとかカルチャークリエイティブとか、スローライフとか、そういったコトが注目されていて、こういう活動が世の中に浸透され始めているように見えるのですが、使っている人ですとか、お客さんとか、消費者の人たちの側の変化はあるのかな?今がチャンスということはあるのかな?ということをどういうことがあるのか、お聞きしたいです。

中村:そうですね。今日は150人の予約で150人以上の応募があったそうですが、これ、もし3年前だったらこんなにあつまっていないと思うんですよね。で、かなり急速にそういうスロー、スロービジネス、スローライフということに関心が集ってきているという気がしています。まあ先程ブラジルの有機コーヒーキャピタル宣言の話をしましたけど、これは日本だけじゃなくて南米でもそうですし、欧米でも、そうですね世界的な流れになってきていると思います。それで、なぜそういう流れになってきているかというと、やっぱり大きなのが環境問題がこれだけ、危機的になってきている。それから近年とくに平和の問題ですね。先程、藤岡さんが憲法9条の話をしてましたけど、私は、スロービジネスの対極にあるのがこういった戦争だと思うんですね。戦争というのは、多分アメリカにあれだけ大規模な軍需産業があったら、あれを維持するために常に戦争をやっていかなければいけない。そういうものをつくり出していくわけですよね。ですから、そういうもの(軍需産業)を減らしていくようなことをしないと、それ(戦争)をとめることができないんじゃないかって私は思っています。そういう風な潜在的な意識みたいなものが、もう殺しあいとか、人を平気で殺すようなこととか、自然を破壊したり汚染していくということは嫌だなあという人たちが、やっぱり急速に増えてきているんじゃないかなという気がします。

藤岡:藤村さんはどうですか?非電化製品って10年前とかでも発明ができていたら、受け入れられたと思いますか?

藤村:10年前にいっても、きっと気狂い扱いされたんではないかしら。あるいは、あんな本かいたって売れるはずがない。第一、出版社が出版しよう、ともいってくれなかったと思いますね。だけどこういうものが売れているでしょう。

あと、ちょっとこの本にも紹介させていただいたけど、ここに来られる方はみなさん「100万人のキャンドルナイト」って参加されたと思いますね。今年は何人だか知らないけど、去年はちゃんと毎日新聞の人が統計をとって500万人の人が参加されたっていうでしょ。私はね、ほんっとすごいことだと思った。たかが夏至の夜に、8時から10時まで電気を消して蝋燭を灯して愛を語ろうよ、なんて、実はね私達の世代にとってはね、そんなこと言うの、この辺くすぐったくなってくるんだ。「ひー」って言いたくなるような。それを我慢して、愛を語ろうよとか言っているわけです。それはね、私達は旧世代派のエコロジー派だから、1970年代80年代、もう地球環境があまりにも深刻で、深刻さを深刻に受け止め過ぎて、「大変だ!大変だ!」って一人だけ深刻になっちゃって、まわりの人につい攻撃的になって、そうして孤立して挫折したという挫折人生なんですね。私たちは、安保で挫折、学生運動で挫折して、環境運動で挫折して、ともうこれで3回挫折したんですね。これでスロー運動で挫折すると、私の一生はもう全て挫折の一生です、ということになってしまう。

ただ、4回目のこれは挫折しないような気がし始めたんです。だってさっきの100万人のキャンドルナイトで500万人の人が電気を消してくれた人でしょ。この人たちはやっぱりこのままじゃいけない、なんとか行動したいんだ、だけどあんまり深刻なことは嫌だ。だからあの100万人のキャンドルナイトのように、愉しく行動をおこさせてあげるっていう、ここを、みんなが求めているんだなと思うんですね。ここがね、スロービジネスのテーマの基本だと思います。みんながいいことやりたい。いいことやりたいのをね、しかし何やっていいかわかんない、だからほら、こうやってやればいいんでしょ、というのをビジネスっていう形で提供してあげる。そこがいいと思うんです。私は、だから可能性は本当に大きくなっていると思うんですね。

藤岡:なるほど。100万人のキャンドルナイトを、御存知でない方もいらっしゃるかもしれないので補足すると、ナマケモノ倶楽部をはじめとする市民のグループが発信して今は環境省も飛びついてきているムーヴメントなのですが、6月の夏至の22日にみんなで一斉に電気を消して、夜7時から10時まで3時間、蝋燭の光りで、さっき藤村さんに文句を言われた蝋燭を灯して、過ごそうという提案で、それが地球が自転すると、世界を駆け抜ける暗闇のウェーブにちょうどなってゆくというものです。

最初は、ブッシュ政権の原子力政策に反対した世界各地の人たちがやったのですが、やってみると愉しいんですね。どう暗闇を過ごすか、というのを、たとえば私はそのときカフェスローで働いていて暗闇カフェなんていうのを企画しました。そういう、もっとポジティブな形で、愉しいから参加するという人を増やしていこうじゃないかっていう運動にしていったんですね。やっぱりそういう何かが必要で、スローということばがグローバリズムの対極を分かりやすく表すものとして出てきたように、「キャンドルナイト」だとか何らかの転換のきっかけ、スイッチって色々あると思うのですが、自然と人とのつながりを愉しい形で取り戻すのは「アウトドア」だと私は思うのですが、アウトドアの観点からいうと山井さんどうですか?今アウトドアを必要としているような子供達がどんどん増えているとかそういう現状がもしあったら。

山井:日本の子供達って、日本人はもともとすごく日本の文化自体も自然と深く関わってきていて、花鳥風月とかそういったことを愛でながらきているわけですけれども。
今の子どもたちに関していうと、僕は59年生まれで、身近に自然がある中で野遊び、路地裏で遊びながら育っている世代なんですね。今の子供達見ているとほとんど自然の中で遊ばないってことになっていて、学力の低下とかともいわれているわけですけれども。僕は数学者の藤原雅彦さんのおっしゃっていることにすごく共鳴するのですけど、「日本の子どもたちの学力が低下しているのは、やっぱり子どものときに必要なだけ外で遊ばなくなったからだ」とおっしゃっているんですね。人間として、あたりまえに育って行く。その年代でしなきゃいけないことをちゃんとする、ということは、やっぱりすごく必要なことなんだろうなと思いますし、そういう風に全然自然と切り離されて育った人が、例えば職業についていって仕事をしていくとやっぱりその仕事自体がおかしくなって世の中がどんどんおかしくなっていくんじゃないかなというふうに思います。

藤岡:中村さんは、会社の時間の中に「畑を耕す」ということを入れていると思うのですが、それは今の山井さんのお話と関連して、何か社員の人たちそれぞれの働き方や気持ちに影響しているんですか?

中村:ちょっと難しい質問ですけど、私自身、さっき農業に携わったという話しをしましたが、そのとき子どもがそれに否応なしにそれにつきあわされたってことがあるんですけど、鶏を飼っていたから朝によく「卵をとってきて」というと、嬉しそうに「卵産んどったよ」って持ってくるんですね。で、また畑にいって「大根産んどったよ、人参産んどったよ」って持ってくるわけですね。多分今山井さんがいわれたような何か重要なことがそこにあるんだろうと。米なんかほんと、すごいなあと思うんですね。ひと粒の種が、2000粒くらい2000倍くらいになるんですけれども、ああいうすごさっていうのは、やっぱりそういうことに触れているのと触れていないのとでは、違うかなあ、と。今、農と食に関心のある人たちは非常に増えています。

藤岡:聞きたかったのはそういうことです。例えば、会社でお昼に食べるもの、とか職場の環境とか、そういうことって、絶対仕事に影響すると思うんですよ。土をいじっている人が、きっと編集した方が面白い本ができるだろうし、毎日見ている景色が美しい方が、いいものが生み出されてくる、という風に私は思っていて、そのような働き方っていうのがみなさんの会社の中に垣間見えることがあり、それをすごいなって思っていたので、この話をしました。

あと、デザインについてもういちどお聞きしたいと思います。スローとかアウトドアとか非電化とか、広めたいものを受け入れられるためには、デザインが重要だと思うんです。さっき藤村さんのビデオにあった、非電化除湿器、あったじゃないですか。

昔カフェスローというお店で、それのお披露目会を企画したんですね。そのとき、知人で青山の246沿いにあるciboneというすごくお洒落なインテリアショップのバイヤーの人が来てたんですが、もう目の色を変えて「非電化除湿器が絶対私の部屋に欲しい」とじゃんけん争奪戦に参加していたり、スノーピークの商品が「品が良い」という形容詞をつけられたり、「ナマケモノのコーヒー」と呼ぶとキャッチー、と言われたりするんですが、そういう「スローなデザイン」の秘密をお聞きしたいのですが。

藤村:藤岡さんがおっしゃるように、デザインの良さは非常に重要だと思うんです。
だから自分自身、自分の塾で生徒の人たちに教えていることのひとつに、よく商品性というと、1番が「機能」、2番に「価格」で、「デザイン」はやっと3番目に来てという、そういう文化を私達は育ててきてしまったんですが、それは、みなさんがソニーとか日立だったらそういうことでいいけれど、みなさんが「名もなく貧しく美しく」という人たちだったら、それは順番が違う。一番がもう「素敵、素敵」。素敵くらいじゃだめなんで、「素敵、素敵」って言葉使っているんだけど、見ただけで、能書きなんか聞かなくたって欲しくてたまらないっていう。2番が、「びっくり要素」。

「よくこういうこと考えついた!」っていう。平凡なものじゃダメですね、ソニーじゃないんだから。あるいは、日立の方いらっしゃいますかね。いらっしゃらないなら言うけど、一昨年まで日立は、広告費を1400億円、日本一使っていたんですね。広告では、「技術の日立」と言って広告しているけど、私は「広告の日立」とよんでたんです。「日本一広告代使っている会社の何処が技術だ?」って、いつも悪口いってたんです。日立ならあるいはソニーならそれだけの広告費使うんだから、大丈夫かもしれない。だけど、「名もなく貧しく美しく」なら、「素敵、素敵」2番目に「びっくり要素」、「驚き」。そして3番目が「価格」で、4番目が「機能」。機能は良いのがあたりまえって意味でね。そしてそのデザインの思想の中に、できればさっきの、「店で買いたいデザイン」ではなく、「使えば使う程味が出てきて、もう捨てたくなくなる。だから捨てない。だから環境も悪くならない」というデザイン思想を是非入れて、そしてそれが「素敵、素敵」の極みという、こういうデザインを是非完成させてみたいですね。

藤岡:長く使えるもののデザイン。どうやったらできますか、山井さん?

山井:さっきそこの裏の方で4人で、「どうやったら本当に愛着をもって長く使いたいものがデザインできるか?」という話をしてたんですね。今、多くの開発の現場、製造業の現場で起こっていることは、分業です。例えば、設計の人とデザインの人と試作の人と、金型作る人と全部ちがう。僕の会社ではひとりの人間が全部やります。

なんでかというと、そうじゃないと、例えば、吉野くんというスタッフがいるんですけど、吉野くんが自分で本当に納得がいくまで関わっていって、そうやってトータルなものなんですね、デザインっていうのは。例えばコスメティックっていう部分のデザインだけでもなくて、機能だけでもないし、やっぱそういう風にデザインってトータルなものなんだと思うんですよ。長く愛着を持って使えるかどうか、というのは。ただのプロダクトデザイナーとか、ただの設計者とか、そういう人は一切うちで仕事はできません。出身はデザイナー出身だとか、設計者出身だとか色んな人はいるんですけれど。一人の人間、吉野君だったら吉野君に、最初から最後まで全部関わってものづくりをやってもらって、会社はどうあるかといったら、僕らチームでやっていますから、それを評価する。どういう意図でつくり出したの?ということを聞き出していって、それが良ければ出しますし。さっき藤村さんが製薬会社の話しましたよね。

圧倒的にそういう会社が多いのかな?とも思いますし、中村さんは農業の話をしたけど、農家だってひどいですよね。お家で自分で食べるぶんは農薬かけないけど、出荷する分はどんどん農薬使ってやってるし。だから基本的にどこのビジネスでもそうですけど、スロービジネスというのは、自分、もしくは自分の会社で、本当にそれを自分がお金を出しても買いたいようなもの、正しい製品を作って、それを世の中に出すってことだと思うんですよね。

ポイントは多分2つくらいしかないんですね。ひとつ目のポイントとしては、良いものを作る。その良いものというのは、等身大、消費者としての自分自身がそれをお金を出して買うか、ということだと思います。組織でも、会社でも、両親などでもいいですけど。今日来られた人も変わり者だと思うけど、会社でもよく言うんですけど、大多数の人はアウトドアをたのしんでないので、自然が大事ということにもあまり気づいていない、「向こう側の人たち」なんです。自然が大事だということに気づいているのはこっち側の人なんです。スノーピークは、大多数の99%の人たちをこっち側に来てもらうようなビジネスをやっている。僕の場合題材は自然だけど、正しい商品を選ぶ、ということも同じだと思います。正しい商品を選ぶ感性の人が増えているということは、仕事をできる領域が広がっていくので、そういうものを見る目がある人たちがもっともっと増えて行けばいいな、と思います。

中村:今の話の中に、農家の人が自分の家で食べるものが安全なもので、出荷するものには農薬を使うという話がありましたけど、これのひとつの理由は、出荷するものが、そういうものでないと買い叩かれるという問題ですね。これは消費者側の意識の問題と、流通業者がそういうものを求めている、という問題があります。

それから、農業の話になったので、先程の製薬会社の話ともつながる生協にいた時代の笑い話があります。ある産地にいったときに、ネギを作る生産者と、その隣に巨峰を作っている生産者がいたんですね。で、ネギを作っている生産者は「おれは巨峰は食べん。あれは直接口に入れるから、あんなものに農薬を使うなんてとんでもない。」と。巨峰を作っている生産者は「ネギはひどいぞ。雨が降った後は、毎日農薬を散布している」と。そういう話、お互いにしているんですよね。

これは農産物に限らず、加工食品もそうですね。例えば、ハンバーグを作っている加工食品のメーカーでアルバイトなんかやると、もうそういう人はあと食べたくないですね、実体が分かると。これは畜産、鶏とか豚とか牛なんかの実体を知っているとそうですし、魚の養殖業もそうですし、色んなものの実体が分かると食べたくなくなっちゃうんですね。そういうものばっかり溢れていますけど、「生産者と消費者が近づいている」という話を山井さんも藤村さんもされていますが、そのときに、やはりオープンなわけですよね。情報をオープンにしてゆく。そういうことが重要だなという風に思います。

藤岡:「情報がオープン」という中で私が見ているのは、中村さんがエクアドルに行かれて、生産者組合の中、人間関係とか仕事の内容が大変な問題を抱えたとき、自分の会社ではないのに、そこの会議に出て行って、人と人のつながりなどを把握し、「あの人にこれを任せればいいんじゃないか」という提案をしたり、生産者組合が生産者とのつながりでお金に困っているというのを知った時、今ただでさえ国際相場の3倍も払っているのに買い取り価格をあげるという決断をする、などという行動をされたりして、それがまるで同じ会社の生産部門と販売部門みたいな距離感で仕事をされているというのを見てきたので、その透明感を出すということが分かる気がしました。

それではこのへんで、今日は「快楽」がキーワードですので、先程みなさんにそれを関しての質問を出しておきました。

「働いている中で一番好きな時間はなんですか?」という質問です。フリップに書いていただいたので、一斉にあげてください!どうぞ。

中村:「いろいろ」
山井:「何か新しいことを考えているとき」
藤村:「イイ人が困っていたら、発明してあげる」

藤村:悪い人は嫌いなんです。悪い人はあんまり困っていないんですね。たまに悪い人が困っていたらほうっておくんですね。いい人は困っているひとが多いんです。それを発明してなんとかしてあげるというのが、私が30年間やってきたことなんです。

実を言うといい人に発明してあげて「とても喜ばれたとき」が一番嬉しいんですよ。
2番目に嬉しいのは、発明して驚かす。「驚いてくれたとき」が嬉しいんです。さっき前半のプレゼンでは、みなさんあんまり驚いてくれなかったからあんまり幸せじゃなかった。3番目にはえらいって誉められるのが好きですね。発明、というのは本当に面白いので、若い人は是非発明家を目指してみたらいかがでしょうか?

山井:僕は何か新しいことを考えているときっていうのが一番好きなんですけど、何か新しい製品、新しいサ−ビスでもそうなんですけど。藤村さんと同じで、僕の仕事はアウトドア愛好者のためにあるので、その人たちが本当にびっくりするもの。 「すげえ!」という反応が返ってくるものを考えついたときとかが、一番好きですね。

藤岡:ちょっと「いろいろ」を聞く前に、コメントはさんでもいいですか?藤村さんは、一番最初に作られた空気清浄器「クリアベール」が子供の喘息のことを考えて作られていたり、とか、今は途上国、モンゴルなどでお仕事をされてますよね。

あと「発明をプレゼントする」ってよく言われるのを思い出したんですが、どうして日本以外の途上国に届けたいと思っているんですか?それも、今おっしゃった「困っているいい人を助けたい」ということなんですか?

藤村:非電化製品を途上国で、というのは、確かに途上国の人たちの方がいい人のような気がします、工業国の人よりも。平均すればですよ。だからそういう人たちが、やはり物質文明の虜になりかけてしまっているんですよ。大人がテレビゲームしたり、子どももテレビゲームしたり。その結果何が起きるかというと、実はね、本当はあまりいいことじゃないかもしれないんだけど。モンゴルの遊牧民の子供達の目の輝きといったらすごいですよ。家事労働も喜んで一緒にやっている。まさにあれこそが、人間の生きる生き方だなあという気がするんですよ。だけど残念ながらウランバートル目指して遊牧やめちゃっているんですね。なぜかというと、テレビがないから。だからじゃあ、テレビだとか洗濯機だとか冷蔵庫だとか、こんなものは電気がなくったってなんとかできるわけだから、それじゃあそうすれば今の遊牧生活が維持できて、ほどほどは快適で、そうするとモンゴルの5等星までみえるくらい空が澄んでいる、というのを維持できるのだから、その方がいいな、と思って、非電化製品を発展途上国とよばれる国でどんどん持って行っているのはそういう理由なんですね。

藤岡:最近見た「らくだの涙」という映画に、テレビが欲しくなっちゃう遊牧民の少年が出てきました。電線がつながっている村とそうでない遊牧民の集落のコントラストがすごかったです。あの少年にも届けて欲しいです。 山井さん、今考えている新しいことは?

山井:秘密です

会場:(笑)

中村:気紛れなんで一番好きな時や愉しいときって、どんどん変わっていくんですよね。生産農場を訪問したり、生産者と話をするのはすごく愉しい。生産者と会うために訪ねて行くということが多いんですが、今藤村さんが「発明」、山井さんが「新しいこと」といって思い付いたんですが、「新しいダジャレを考えているとき」もそうですね。

藤岡:例えば、なんですか?

中村:ちょっとこれは、内緒の話ですけど、「水筒」ありますけど、すいとう、は博多弁で「好いとうばい」なんですね。I LOVE YOU.なんですけど、それ、私が「水筒は愛の運動だ」ってふうに言ったんです。これ、辻信一がとっちゃって自分が発明したかのように言ってるんです。みなさん、これは、私が作ったんです。ピースローソクって本も私が作った言葉なんです。

会場:(笑)

中村:最新のはですね、「ハッピースローカルチャー」。

会場:(しーん)

中村:まあ、あとでゆっくり意味を考えてください。

藤岡:スロービジネス家は、人に言ったことをとられても、おこらない。というのも大事なことなんですね。これは個人的にとても聞きたかったのですが、みなさんが影響を受けた人を教えてください。

藤村:中村隆市
山井:父
中村:三浦梅園 松下竜一

藤岡: 藤村さんは中村さんとあげているのに、中村さんはあげてないので、片思いですが。

藤村:私は中村さんも藤村靖之って書いてくれると信じてたんです。中村隆市さんは本当に尊敬しています。偉い。ただひとついやなことは、おやじギャグ。それさえやらなければ中村さんってもう完璧な人なんだけどね。まあ、ひとつくらい完璧でないことがあるほうがいいかもしれない。中村さんはね、「あ」あせらない、あきらめない、つまり本当にね粘り強くやられる。だから、必ず最後はいい結果が生まれるんですね。

私なんか飽きっぽいからすぐ焦っちゃう「い」急がない、いばらない。私なんか急いじゃうし、調子よくなるとすぐいばっちゃうんだけど、すぐ「ソニーはバカだ」とかね。「う」嘘をつかない、人を恨まない。人間関係をいい風に、人のいい面をどんどん引き出すような、そういう人ですよね。え、お、は書けなくなったから終わり!

中村:嘘つきの藤村さんでした。

藤岡:か、かっこいい。蝋燭の件のフォローになってました。

山井:さっき冒頭でもお話ししたように、僕はアウトドアすきになったのも父のおかげですし、今のビジネスやっているのも、やはり父の影響だと思います。15年くらい前になくなってしまっているのですが、今でもアウトドアで遊んでいると一緒に遊んでいるような気持ちになります。

中村:藤村さんって書きたかったんですけど、「三浦梅園」ですね。江戸時代中期の哲学者です。医者でもあったんですが、この人がなかなか味わい深いことを言ってます。「枯れ木に花咲くに驚くより、生木に花咲くことを驚け。」

これは枯れ木に花が咲くことは驚くけど、生きた樹に花が咲くことを驚かないと。で、本当は生きた木に花が咲くことに驚くべきじゃないかってことを言ってるんです。「スロービジネス」を私は「命を大切にする仕事」というふうにいってますけど、もうひとつ私が好きな梅園の言葉に、「経世済民」と「乾没」がある。経済には、2通りあると言っている。一つは、経済の語源である「経世済民」だと。経世というのは世の中を治めて、「済民」、民を助けると。世の中を平和にして人々を助けるものが経済だと、言ってるんですね。もうひとつ経済があると。それは「乾没」という風に言ってるんですけど、これは、「自分だけが利益を得る」。例えば自分の会社だけとか、自分の国だけとか、自分たちの時代だけ。こういうものが環境問題とか、戦争とか、そういうことを起こしていますけど、経済というのはもともとは素晴らしいものだ、といってるんですね。

それからこの松下竜一さんは、私が非常に貧乏な時代に助けてくれた作家で、今年の6月に亡くなったんですが、松下さん自身非常に貧乏だったんですね。貧乏で有名で貧乏3部作というのがあるくらいに貧乏だったんですが、その貧乏な松下さんが、私が貧乏なときに「私の子どものミルク代に」って援助してくれたんですね。その頃私は仕事をほとんどしてなかったんです。アルバイトをちょこっとするくらいで。なぜかというと、経済活動、企業とかビジネスとかそういうものが公害を生んだり環境破壊を引き起こしているという風に思っていて、今はスロービジネススクールというのをやっていますが、20代の前半、私はビジネスというものが大嫌いだったんです。その考え方を変えるきっかけを作ったのが松下さんです。

松下さんは貧乏だったから、奥さんがまわりの人から「パートに出たら」と言われるんですけれども、そのときに、「パートで得るお金より散歩の方が大事」といって散歩をしているようなスローな夫婦だったんです。私が一番影響を受けたのは、松下竜一さんです。 

藤岡:100万人のキャンドルナイトのひとつのきっかけにもなった人ですよね。『スロー快楽主義宣言』にも出てきますよね。中村さんが影響を受けた松下さんについて、もっと詳しく知りたい人はお求めください。

藤岡:そろそろ、会場から質問が沢山届いているので質問をします。講師にはそれぞれへの質問が渡っているのですが、私の手元には、20代から3人への質問が届いていて、すごく聞きたそうなので、優先して聞いてしまいましょう。すばり「スノーピークやウインドファームに就職するにはどうしたらいいんですか」という切実な質問です。
 
山井:スノーピークに入るのはすごく簡単ですよ。自分の2本の足でたってて、自分の頭で考えていて、僕が面接させていただいていてこの人と仕事したらいい製品やサービスが一杯生まれるかなって思えたら即採用します。

藤岡:今実際にはどういう人が来られているんですか?

山井:えっと、おしかけ人パターンが、多いですね。

中村:ウインドファームは山井さんの所と違って小さい会社なので、一年に2人くらいしか雇えないんですね。それで私は断り続けてきたんですけど、もう断るのもしんどくて、断ったあとに非常につらい気持ちになって、それで考えたのが、スロービジネススクールなんですね。ウインドファームに働くことが出来なかった人はまずスロービジネススクールに入って、学生がスロービジネスを展開しますので、まず、そうして下さい。

藤岡:はい。それではあとは、それじゃみなさんそれぞれお手もとにある質問から選んでお答えください。

藤村:手巻きラジオを始め、非電化製品はどうやって手に入るか?インターネット使える人はhidenka.netを見て下さい。そこからすべてアクセスできるようにしています。除湿器なら500台、冷蔵庫なら1000台集ったら、みなさんで相談しながら商品化します。よろしかったら是非。

「美しい木製の手巻きラジオ、是非製品化してください。私は2台注文させていただきます」よかった今日2台売れた。

藤岡:質問表に書かないで欲しい(笑)でも、私も欲しいです。さっきは非電化の手巻きラジオを紹介させてもらいましたが、もうひとつね、この本にはちょっと予告編書いたんですけど、非電化のヒゲソリ器。今木工細工が得意な会社2社と一緒に進めてます。これもさっきお話した捨てられている銘木の端材を使って、3回ため息が出るヒゲソリ機というのがテーマでやっています。一回目は、あまりの感触の良さと美しさにもう惚れ惚れする。2回目は、使えば使う程味が出てきてそれでため息が出る。3回目のため息はちょっと、内緒話です。まあ、3回ため息が出る非電化ヒゲそり器を是非作っていきたいんですけども。

藤岡:えっ、3回目が気になる。

藤村:ちょっとあとでね。3回ため息が出るようなヒゲソリ器を作れば捨てたくならない、愛着が出てくる。そしてもう壊れたら直してでも使いたくなる。そういうことが環境問題の原点かもしれないな、という気がしましてそういうことをどんどんやっていきたいな、と思っています。

山井:同じ質問がお2人からあって「アウトドアを楽しむのに車を使うかどうか?」という御質問です。自然の中で、アウトドアを楽しむ人が非常に少ない、という現状の中で、アウトドア派の人をまず増やしたい、と思ってますので、移動手段は、車でも、自分の足でも、ちゃりんこでも、列車でも、まあ、なんでもいいと思います。カヌーでもいいし。とにかく、外に出て遊んでいただいて、自然が大事なものだってことを、感じていただきたい、という風に思います。傾向としては、最初例えばRVキャンピング、オートキャンピングから入られて、だんだん自分の足でトレッキングにいかれるとか、だんだん車を使わなくない方向には、いってらっしゃるユーザーさんがスノーピークのユーザーさんに関してみていると多いような気がします。

2つ目の御質問で、「スタッフは愉しい仕事をしていると思うか?」ということなんですけど好きじゃないと来ませんから、うちの会社は。好きじゃないとできませんし。で、ほんっとうに、幸せそうな奴が多いです。

中村:「フェアトレードは利益を出すのが大変なのでは?」ってありますが、これは、国際相場より高い価格で仕入れているからということなんですが、沢山利益を得ることはできてないですが、食って行くことができていて、毎年少しづつスタッフが増えています。なぜさっき国際相場の3倍のお金を出してもやっていけたかというと、私の場合、コーヒー生産者と提携して、輸入、焙煎、販売という過程を全部自分の所でやっているんですね。だから色んな中間業者が入らないということで、生産者から高く買っても、それ以外の経費がかからないということで、消費者が買うときにそれ程高くはないということです。

それから、日本の地域とフェアトレードをどのようにつなげればいいか、ということがありましたけど、先程スロービジネススクールというのを話しましたけど、そこの学生と一緒に作る「スロービジネスカンパニー」という会社で、今いろんなビジネスのアイデアがありますが、その中のひとつにスローな村を作ろうというのが、動きつつあってスロービジネスカンパニーが、福岡県の一つの候補地、赤村という村に拠点を置いて、有機農業を中心にした村づくりをしますけど、そこに通信販売の販売拠点をおいて、そのときにフェアトレードのコーヒーや紅茶、日本の有機農産物をセットで扱っていこうと思っています。

それからウインドファーム製品でコーヒー以外のものがあるか、ということですけれども。今、いろいろ増えつつあります。スロービジネスカンパニーとも一緒にいろんなものを考えています。ひとつは、手作りの文化を大事にしたいと思ってまして、手始めに手作りの化粧品の原料を提供して手作りすることを伝えてゆく、ということをやっていきたい、と思っています。この他にも沢山ありますので、興味のある方は、連絡いただけたらと思います。

フェアトレードに消費者としてだけではなく関わるにはどうしたらいいか、ということですけれども、これもスロービジネススクールがいいと思います。内緒の話ですが、スロービジネススクールの第2期に、締め切ったあとにも問い合わせが来てまして、今月末まで受け付けます。

藤岡:スロービジネススクールは、山井さんも藤村さんも講師でいらっしゃいますのでもっと話を聞きたいという方は是非調べてみてください。

最後にみなさんに、スロービジネスとは自分にとってヒトコトで何か、ということと、会場のみなさんにメッセージを。参加動機をそれぞれ読まれたと思いますので、改めてになってしまうかもしれないのですが、最後にメッセージをお願いします。

藤村:スロービジネス。私達の20世紀にはやりたくてもできなかったことがやっとできるようになった。いい時代になりましたね。是非スロービジネスを目指す方はやっていただきたいんですけど。ただ、ひとつだけ言っておきたいことは、「いいことを本当に心からたのしんでやって欲しい。」ということです。いいことを愉しんでやっているといい人が集ってくる。悪いことを愉しんでやっていると、悪い人が集ってくる。こういうことだと思うんですね。

実はね、みんな入り口はそうやって入ってくるんですけど、なぜか途中で楽しめなくなってしまう。それは、お金がきれてしまうからなんです。みんなそうです。そうして挫折していくわけですね。スロービジネス、いいことを愉しくやるんだ。しかし、さはされどもビジネスはビジネスなんですから、どうやって収支のバランスをとるのか、というこの能力だけは是非高めていって欲しいです。でないとせっかくの愉しい人生が辛い人生になっちゃいますからね。そのためには、どうすればいいだろう。例えば、スロービジネススクールで勉強していただく、というのもひとつのアイデアですね。採算を合わすためのテクニックはきちんと勉強した上で、いいことを思いっきり愉しく、さっきから話していた「共感をエネルギーとして」という、私の言葉でいうと「自己増殖」というんですが、お客がお客を呼んでくるような、そういうやり方を是非やっていただくといいんじゃないかなと思います。

山井:スロービジネスというのは、僕にとっては、それ以外に自分でビジネスをやる方法はないな、と思います。誰が相手かというのがあると思うんです。みなさんがやっているお仕事でも。お仕事の結果、誰が幸せになるビジネスかというのがあると思うんです。僕の場合にアウトドアの愛好者がサービスや製品をお届けする相手としていらっしゃるわけですけれども、スノーピークの場合は100人アウトドア愛好者がいたら、100人が相手だとは思っていません。100人にその製品を買ってもらおうとはしていません。僕の会社は、価格が一番高いし品質も非常に高いので、はまっちゃっている人しか買わないと思います。100人いたら、だいたいどのビジネスもそうですけど、初心者の人が90人くらいいて、ハイエンドなコンシューマーって5%か10%くらいですよね。僕の会社はその人だけが買えばいいと思っている。残りの90%の人は将来のお客さんだけど、今は我々のお客さんじゃない。そこを間違うと、スロービジネスとは、どのカテゴリーでも通用しないのかなと思います。経済用語で言うとマーケットのことばでセグメントというものがありますよね。どのセグメントが自分の事業の対象者なのかちゃんと規定していけばいいと思います。スロービジネスの場合には、例えば日本のマーケットを考えた場合一億3千万人を相手にしていたらスロービジネスできませんよね。さっき藤村さんや中村さんがおっしゃったように、10万人とか一万人とか、エリアで証券が50万だったら5000人とかで、成立するビジネスってありますよね。そこを深く掘り下げていってそこの領域は絶対まけませんっていうことでやってって。それでも経営的に成り立つかどうかってことを、やっぱりビジネスはビジネスなんで、利益を出していかないといけないと思います。

ただ、正しいビジネスの仕方をしていれば、利益は出るはずなんです。もしそのセグメントの設定の仕方を間違えてなくて、正しい製品を作り、だけど売れないとか言ったら製品やサービスに問題があると思いますので、それは素直に改善した方がいいと思いますよね。で、好きなことをやった方がいいと思いますが、好きだけじゃだめだと思います。ちゃんと自分の事業が対象としているセグメントの中にいらっしゃるコンシューマの人なり、クライアントの人たちが、そのサービスが欲しい、他の会社、組織から供給されているよりもいいということをちゃんと認識できるようなものをつくっていかないといけないと思うので、そこの所をみなさんに是非チャレンジしてもらいたいと思いますし、成功してもらいたいですので、そういういくつかのポイントをちゃんと守ってチャレンジされたらいいと思います。

藤岡:ありがとうございます。メモっている人がいっぱいいました。

中村:今日ビジネスをテーマにこういう集りがあったんですけれども、普通こういう場ではどうやって稼ぐか、とか、儲かるか、ということを教えると思うんですね。私はそういうことは、全然教えることはできないんですけれども、むしろ「少ないお金で充実した人生を送る」ということが大事じゃないかと思っているんです。もう私は2/3くらい人生終わっていると思うんですけれども。「人生にとって大切なことは何か?」ということをゆっくり考えることが大事ではないかと思うんですね。お金があったら嬉しいけれども、しかしそれで失っていくものも沢山ありますよね。お金はそんなにないけど素敵な人生を送っている人は沢山いて、私は「なぜ人間は死ぬのに生きないといけないか」って子どもの頃は思っていましたけれど、今はですね、こういう自分がやりたい仕事をやっていく中で、藤村さんや山井さん、若い人たち、素敵な人たちと出会うことができた。それだけでも生まれてきた甲斐があったなあと今は思っています。そういう内面のことを大事にするということが重要なことじゃないかな、と思っています。

藤岡:どうもありがとうございました。今日色々お話をお聞きするなかで、心から楽しんでやること、収支のバランスを身に付けること、どんなお客さんに伝えたいのかを深く掘り下げて考える。それは、先程のスライドのああやって使っていらっしゃるお客さんの顔を見るようにしていれば分かることだと思うのですが。それから支配でなく共感で広がって行く商品を作る、その共感をエネルギーにする、など、私は色々大事なキーワードを見つけました。みなさん、多分150通りのみなさんが吸収したキーワードがあると思います。そこから是非今後とも継続してスロービジネスというのが自分にとって何なのかということを手繰り寄せていってください。人生にとって何が重要か、という話もありましたが、働き方だけでなくて、生き方に対してヒントになることも沢山あったと思います。そういうことが、これから新しいスロービジネスを生み出したり、応援したりするようなパワーにつながっていけばとても嬉しいです。3人のゲストのみなさん、遠くからわざわざありがとうございました。御来場いただいたみなさんもありがとうございました。

上にもどる
過去のイベント一覧にもどる