8月から9月にかけての約6週間、ナマケモノ倶楽部のボランティアとしてエクアドルを訪れた酒井卓爾です。
エクアドルを訪れた最大の目的は、リオムチャーチョ農園に行くことでした。なぜリオムチャーチョ農園なのかというと、日本でたんぼ作業や農作業を通して、パーマカルチャー農法や疎遠になっている都市と農村の関係に興味を持ったことが大きな理由です。リオムチャーチョ農園はパーマカルチャーの実践だけでなく、人の手が入ることで荒れた土地、自然、地域を再生して来た場所です。ここに行き、自分も彼らの生活スタイルを体験したいと考えました。
簡単ですが、リオムチャーチョに滞在した約2週間の生活の様子を送ります。
1:リオムチャーチョとは?
リオ・ムチャ―チョとはエクアドルで最初に認められた有機農場のこと。そして“リオムチャーチョコミュニティ”のモデルファームでもある。ここではパーマカルチャー農法を取り入れるなど、自給自足で循環型の生活している。環境都市バイーヤ・デ・カラケスの環境活動家二コラ・ミアーズとそのパートナーダリオが経営するGuacamayo tourがコーディネイトを行い、ここリオムチャ―チョ農園にエコツーリズムリストやボランティアが世界各国から訪れている。
ここはエクアドルの首都キトからバスで8時間の所に位置する海岸地方バイーヤから、さらに北へ30キロのところに位置している。地域面積は22ヘクタールと自給自足するには十分な土地である。
またリオムチャーチョとはここに住む人々のコミュニティの名前でもあり、ここを流れる川の名前でもある。この川は雨季になると若い青年(リオムチャーチョ)のようになにをするか予想が着かないという意味を持つことからこの名がつけられたそうだ。コミュニティといっても村のようなものはなくこの川に沿って民家が存在している。その数350人78世帯。ここに住む人々は人と人・人と自然のつながりを保って生きようと試みている。
2:到着初日の感想
まさしく隠れた楽園!建物の周りには、畑も森も川あるし家畜もたくさんいる。(ホタルもたくさんいた!)しかも建物はかなり綺麗。窓が閉まらなくてちょっとびっくりしたけど、慣れればきっと大丈夫。ただ寝るときはちょっと寒そう。(実際夜は本当に寒かった。窓がないプラス布団も薄い。)静かなところかと思ったけど、豚の鳴き声がうるさい。眠れなそうだ。(実際はすぐ眠れた)
3:生活の様子
朝5時過ぎ。豚・鳥・虫の鳴き声プラス馬の足音という最高のモーニングコールで起される。ここリオムチャーチョ農園では朝6時半から家畜の餌やり・人間の餌作りから朝が始まる。朝早いが寝起きは良い。毎晩10時には就寝しているからだ。97年からこの村にも電気が入って来たため夜はそこまで暗くはない、が疲れて10時には眠さの限界となる。他のボランティアたちも、スペイン語の勉強やカードゲームをしているがそれほど長続きしない。
ドイツからスペイン語を勉強しに来たというクリスティーナ(年齢不詳)だけがいつも11時近くまで起きて熱心に勉強していた。彼女のように、ここに来ているボランティアの大半が語学目的ということにも関わらず、この農園のすばらしさに感激しそれ以上のものを得ていると口をそろえていっていたのが印象的だった。
だが愚痴も多い。なぜならここにはビールもピザもクッキーもないからだ。人里離れた農園なんだから当たり前と言えば当たり前かも知れないが、午前8時半から水まきなどの畑作業の手伝い、午後2時から5時まで各自のプロジェクト作業と毎日フルに働いたあとにこれがないのはなかなかきついらしい。私も作業の後アイスが食べたいと何度か思った。特にビール・イズ・ライフのドイツ人アイク40歳には耐え難いものだったようだ。
毎日作業が続くと言っても、水曜日の午後だけはちょっと違う。息抜きということで、ここのオーナーであるダリオが、どこかに連れて行ってくれたり、タグアやココのネックレス・指輪など、もの作りをさせてくれる。
4:マチェテ
私はスペイン語が全く話せなかった。当初「ア・ケ・オラ!」(今何時?)という質問を単にオラ(挨拶)と勘違いして、腕時計を持っているのにも関わらず「オラ・コモエスタ?」(調子どう?)と返事してしまっていた。
そんな苦戦のスペイン語だったが、すぐに覚えた単語がいくつかある。その一つが「マチェテ」である。日本語でナタのこと。作業に行く前に、いつもマチェテをもってこいと言われていた。畑作業から道を切り開く道具さらにオレンジの皮剥きまで、マチェは欠かせない生活の道具となっている。これがここでの生活必需品ってやつです。
5:食事
朝は農園で取れた新鮮なフルーツ、トルティーヤのようなもの、バナナ料理、マテ茶、お昼はかぼちゃスープなどのスープ・メイン料理・サラダ・白米・ジュース。メイン料理と言ってもここでは菜食主義をとっているため肉や魚は出ない。豆を使った料理が多かった。
肉や魚がないからといってもまったく問題ない。エスニックで香葉が効いた料理はとても満足がいく。夜もご飯・サラダ・メイン料理・お茶と充実。食事をしにくるだけでも十分な場所である。もちろんすべてリオムチャ―チョ産。
6:リオムチャーチョにある設備
リオムチャーチョにはすべてのものが自然と調和するようにデザインされている。コンポストトイレ、バイオガス発電、コンポスト、グレーウォーターシステムなど。ここでは私が関わったグレーウォーターシステムを簡単に紹介をします。
グレーウォーターシステムとは水の浄化装置のこと。使用した生活排水はすべてこれを通って川に戻るようにデザインされている。リオムチャーチョに住む78世帯380人が川の水を生活用水としているため、上流に住むものが川の水を汚せば、下流に住む者の生活用水・飲料水を汚染することになる。そのためこの農園では合成石鹸・洗剤は使えない。ボランティアに来る人ももちろんそうしなければならない。
浄化装置といっても特別な機会を使うわけでなく・植物・自然の力を利用するもののため、分解出来るものしか使うことは出来ない。私は、このグレーウォーターシステムを新しく作る作業のお手伝いをした。といってもコンクリートで周りを固めてのと、水草を取りに行っただけですが。。
浄化の手順は以下のとおり。
水は活性炭の入ったバルブを通り3つのため池に順番に溜まっていく。
T 溜め池1 油を浮かせる。(油は2ヶ月に1回とる)
U 溜め池2 石のフィルターを通す。中の石は小→中→大→砂の順番に並べる。
V 溜め池3 植物フィルター(葦や水草)ここが大きな池となっていて水を溜める。
W 直接水を川に流さず、フルーツの木下に流す。
7:最後に
日本に帰ってきてから、うちのばぁちゃんにリオムチャーチョの写真を見せた。すると「昔の日本とあんまかわんないね」と一言。もちろんこれは、今の日本と比較して優越感に浸っているのではない。ばぁちゃんには単に地球の裏側エクアドルと昔の日本の風景が重なって見えたのだ。
持続可能な社会はエクアドルだから出来るとか、地域の問題ではない。どこの世界にもあった、いやまだ残っている物なのだ。海外に行く僕に、ばぁちゃんはよく言う「せっかく日本に生まれたんだから、日本で何かしなさいよ」って。今まで見ているようで見ていなかった日本、知らないことだらけ。楽しいこと、すごいことがたくさんあるはず。それを見つけられたとき自分は十分だって言えるようになりたい。
最近大学で就職活動が始まった。この体験を忘れずに日本で出来る何かを探して行きたい。
(リオムチャーチョの住民ベンハミンとその妻フアンナは言っていた。「もちろん日本には行ってみたいけど、ここの生活で十分だ」、完全ではないけどこれで十分、これが循環型社会を形成しているリオムチャーチョから私たちが学ばなければならない、もっとも大切なことではないだろうか?)
リオムチャーチョについて興味を持った方は
Guacamayo tour http://www.riomuchacho.com/をチェックして下さい。
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