エクアドル鉱山開発問題
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コタカチ郡亜熱帯地方、インタグ

鉱山開発へのオルタナティブとしてのコーヒー栽培プロジェクト

コタカチ郡の西側を占めるインタグ地方の山々。コタカチ郡は、都市部、アンデス部、亜熱帯部から構成されていますが、この亜熱帯部を占めているのが、インタグ地方です。緑に覆われた険しい丘陵と太平洋に流れ込む無数の急流によってえぐられた峡谷。太平洋からは、毎日内陸に向かって重く湿った雲が上っていきます。白く光る無数の急流はその雲がもたらす水を再び海に返します。雲霧林はアンデス山脈西麓に広がる、世界でも珍しい生態系、最も生物多様性豊かな森です。

インタグ川の流域では今世紀になってから大規模な植民が行われ、農業の拡大のために元の亜熱帯林の90%がなぎ倒されてしまいました。わずかに残された森林は、地域固有の種や絶滅の危機に瀕する種を数多く擁することで知られています。 

インタグの住民たちは、この森での大規模な銅山開発計画に反対し続けています。その代わりに持続可能な地域づくりで自然環境を守りながら貧困から抜け出す道を選びました。このことがコタカチ郡全体の「環境保全群宣言」につながったきっかけでもあるのですが、その方策のひとつが、地域の伝統的な多品目栽培を生かした「有機無農薬コーヒーの生産」と「カブヤ編み」、それを適正な価格で販売する「フェアトレード」でした。
★スローキーワード:インタグ
インタグ・フニンにおける鉱山開発問題 (概要)

1991年、インタグで行われた、エクアドル・日本の両政府により合意された「鉱山開発プロジェクト」は、その貴重な自然の破壊に直結するものであった。この豊かな地に埋まっているのは、リードおよびヒ素他の重金属と混合された、銅、モリブデンなどである。このプロジェクトの環境的、社会的影響は大きかった。それは、多数の住民の都市部への移住、森林の伐採、採掘による地域の天候の変化、絶滅危惧種の動植物への影響、生態保護区への影響、基準値の100倍を超える重金属による水源地の汚染などである。それらが予見されていたにもかかわらず、情報は住民たちに公開されず、豊かな自然は荒廃していった。

そんな悪影響を与えた鉱山開発を阻止するために、地元住民は、環境保全団体DECOINを結成し、採掘の影響やプロジェクトに関する情報を入手し、反鉱山開発キャンペーンを行ってきた。また、エクアドル国内外の環境と人権保護組織に情報を発信し、世界的に反鉱山開発キャンペーンを展開してきた。国際的な支援および圧力により、インタグ地方における鉱山開発計画から撤退させた。

しかしその後も、様々な多国籍企業があの手この手を使って、インタグの地下資源を開発しようとしている。2002年8月、エクアドルのエネルギー鉱山省は、インタグ地方における採掘権の競売を行った。土地は個人・地域のものでも、その地下にある鉱物は、国のものであるという理屈だ。しかしエクアドルの憲法では、第二十三条ですべての国民は健全な環境に住むことが保証されており、第八十六条で、採掘権を売る前に、住民の許可を得ること(相談すること)も憲法でうたわれているがそれらが守られていない。またコタカチ郡の「環境保全条例」は、生活環境へ重金属をもたらす経済活動を禁止しており、この行為はエコツーリズム、コーヒー生産プロジェクトなど、コタカチ郡インタグ地方での事業へ影響を、懸念するものとしている。競売行為は、基本的人権の侵害にあたるとして、コタカチ郡は、鉱山開発権利の授与を禁止し、この開発権利が授与された場合は、差し止めを行うことを宣言したが、その落札した個人の弁護側は、「開発権利を取得した事実により、明白で修復不可能な被害は今までになく、現在もなければ、将来もあり得ない」とし、この判決に対し、裁判は最高裁に委ねられた。が、最終的には、陪審員票4対5で敗訴してしまった。

現在、汎アメリカ人権委員会に、基本的人権が侵害されたとして、このケースを訴えるための準備を行っている。
汎アメリカ人権委員会 (Inter-American Commission of Human Rights)

汎アメリカ人権委員会とは、南北アメリカ大陸の人権保護の状況を監視する機関で、ほとんどの南北アメリカ大陸の国々では承認され、加盟している。(エクアドルも。ただしアメリカは署名していないそう。)この機関はOAS(Organization of American State)の一部で、ワシントンDCに本部があり、裁判所は、コスタ・リカのサン・ホセにある。

どう機能するかというと:

1)人権侵害の実情(書類、写真、ビデオ)などで、提示する。
2)委員会がこのケースを吟味し、人権侵害がなされているとみなした場合、直接人権侵害をしている側に人権の尊重などを訴え、問題解決にあたる。
3)それでもダメだったら、裁判所で委員会(Commission) VS 人権侵害している側で争う。
4)勝訴:たとえば人権侵害している側が国である場合、人権保護にあたるよう、強制する。(人権が侵害されないような新しい法律、メカニズムなりを作る。)(その強制力を持つ。)
 敗訴:敗訴の場合もあるけれど、それはそれで、以前と変わらないということになる。

 フニンの場合は:
1) いかにフニンで行われていることが違法であり、人権侵害であるかを提示する。(国が採掘権を売ることそのものは違法ではない。欧州大陸のような法律が適用されている。しかし、憲法で、すべての国民は健全な環境に住むことが保証されており、この地域での鉱山開発は、健全な環境を破壊しうるという点で違憲である。また、採掘権を売る前に、住民の許可を得ることも憲法でうたわれている。つまり国がフニンの住民の人権を侵害しているという形になりうる。またコタカチ郡には、環境保全条例というものがあり、その総則に、コタカチ自治政府は、郡の原生林と生物他余生の保護並びに持続可能な運営が最高度に優先されるべきものであると宣言する、とあるので、この郡レベルの法律にも違反している。)ちなみに、DECOINでもなく、地域発展評議会でもなく、フニン村として汎アメリカ人権委員会に提示することが決まった。

2) 委員会で承認されたら、委員会より、エクアドル政府に注進し、状況改善にのぞむ。
3) 政府がそれを受け入れない場合、サン・ホセの裁判所で、委員会対エクアドル政府が争うことになり、フニンは参考人として、資料を提示。
* サラヤク(エクアドルのアマゾン地方で、石油開発の問題を抱えているところ)もここにケースを提示、政府を動かしたという背景がある。

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