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コタカチ郡知事、アウキ・ティトゥアニャ氏と民衆議会  報告:和田彩子

アウキ氏が先のコタカチ郡知事選で3期目の当選を果たしたことは、すでにお伝えしていますが、今日はもう少しアウキさんのことを書いてみようと思います。

アウキ・ティトゥアニャ氏は、1996年にはじめてキチュア民族の知事として当選しました。当時、まだ30代前半だったにもかかわらず、彼は社会、経済、文化、環境のあらゆる面で持続可能な発展および多民族・多文化の市民としてアイデンティティーの強化を目指し、リーダーシップを発揮し、代表制民主主義ならぬ、参加型民主主義、つまり市民一人一人が声をあげ、またその声が政府に届くような政治を志しました。その一形態が、年に一度行われる「民衆議会」です。

先住民、メスティソ、アフリカ系エクアドル人地域の意思を迎え入れ、総合的な発展の視野をうまく補完する条例の枠組みを、子供から大人まで誰でも参加でき、自分たちの活動を自己評価し、以後の活動の計画を練る場を作りました。

先週、「第9回民衆議会」が行われ、私も参加してきました。この民衆議会では、いつもアウキさん郡知事による郡の収支の内容が発表されます。アウキさんの参加型民主主義の中で、「参加型」が如実に現れているのは、「参加型予算委員会」です。

自治体が、定期的に農村部に訪れ、住民や、女性グループ、青年グループなどの代表者と話し合い、彼らの要望をできるだけ取り入れ、郡の収入を本当に住民のために生かしていくことができるのです。ナマケモノ倶楽部関連企業のスロー・ウォーター・カフェが扱っている商品の中に、インタグ産のアロエのナチュラル石鹸があります。この石鹸を作るにあたって、必要な機材などの一部を自治体に申請し、そこから出た予算で買ったということでした。

また私たちが、  民衆議会では、予算がいくらあって、どの程度が何に使われて、それが全体の何パーセントなのか、収入源は、など、細かいところまで発表されます。特に注目したいのは、コタカチ郡内の都市部、そして農村部(アンデス地方&亜熱帯地方(インタグ))における予算の割合です。都市部=25.5%、アンデス地方=35.97%、インタグ=33.44%と、このふたつの農村部に全体の4分の3が当てられています。

これは、遠隔コミュニティーに電気が導入されたこと(80コミュニティー)、そして識字率向上プロジェクトに多くの予算が割かれたからです。農村部の大人、特に女性たちに高い文盲率を下げるためにプロジェクトが展開されました。アウキさんのプレゼンテーションの中で、先住民の女性が、赤ちゃんにおっぱいをあげながら不器用に鉛筆を取っている写真があったのですが、それがとても印象的でした。

全体会議の他、教育、生産&観光活動、環境、青年、こども、参加型予算のラウンドテーブル・ディスカッションもあり、それぞれの問題について活発に話し合いが行われ、特に環境問題に関しては、主に鉱山開発問題について話されましたが、時間切れだったため、来週の火曜日に特例民衆議会として、さらなる話し合いが行われます。

余談ですが、アウキさんが出馬したのは、政党とは少し違う社会運動団体で、パチャクティックという名前です。パチャクティックとは、「新しいとき」を意味し、エクアドルの先住民族(エクアドルには19民族存在するという)、農民、そして黒人と、エクアドル国内で、差別され、人権を迫害されてきた人たちのアイデンティティー・文化の・再評価、復活、人権保護を目的として設立された団体です。アウキさんはこの団体の主要メンバーとしても活躍されています。

アウキさんが、二期目を務めていたときから取り組んでいたことのひとつに、エクアドルの法律を変えるというものがありました。(私は法律用語に(も)明るくないので単語がおかしいかもしれませんが、ご勘弁ください。)

コタカチ郡が発令した、コタカチ環境保全郡条例は、条例、つまりノルマであって、法律ではないので、国の法律に対抗することができないのです。ちなみに同じくアウキさんの政策の大きな柱である、あらゆる分野の地方分権化(Decentralizacion)はLEにあたるそうです。(これには、医療、教育、公共サービスの普及などが含まれる。)そこで自治体行政法に以下の二点を含むことを国会に提案しているそうです。すでに議論が始まっています。
@ 鉱山開発法を通過した鉱山開発が郡内で行われる場合、必ず郡に許可を求めること 
A 自治体行政法の自治権に、郡による自然資源の管理の権利を与えること

私の中では環境保全郡条例があるんだから、とそこで思考は止まっていましたが、さらに上のレベルにまでもっていこうというアウキさんに感銘を受けると同時に、法的設備を整えることの重要さを実感しました。こうしたことが、鉱山開発に反対を唱えている住民の大きな支えになると思います。

アウキさんはいつも、母なる大地がいかに私たちに恩恵を与えてくれているか、そして、文化が自然とつながっていくためにいかに大事なものかいつも語ってくれます。そのアウキさんが担うコタカチ郡知事。自然と共存していくコタカチをもっと広げていってほしいなと思います。

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