*スピーチはスペイン語で行われました。以下、和田さん本人の日本語原稿です。
2004年2月27日
はじめまして。日本のNGOナマケモノ倶楽部から来ました、和田彩子と申します。このたびは、エコシティー5周年おめでとうございます。このイベントに参加させていただくことを光栄に思うとともに、このイベントのオーガナイザーたちに感謝したいと思います。
< ナマケモノ倶楽部の紹介 >
現在、私は、ナマケモノ倶楽部エクアドル派遣員として、インバブラ県のコタカチ郡で、環境保全活動を支援するフェアトレードに携わっています。今日は、その活動のご紹介をさせていただきたいと思います。
まずナマケモノ倶楽部とは何かをご説明させていただきます。ナマケモノ倶楽部と聞いて、不思議に思われた方もいらっしゃるかと思いますが、ナマケモノという動物には学ぶところがたくさんあるのです。
ナマケモノは、行動がゆっくりであることはみなさん、ご存知だと思いますが、さらに言えば、ナマケモノは非暴力的で、エネルギー消費量が低く、また循環率が高い動物なのです。
ナマケモノは、セクロピアという樹に住んでいますが、その葉を食べ、排泄の際に樹の根元に下りてきて、穴を掘り、その中に排泄します。ひとつの樹から得た養分の50%を同じ樹に返すことができる動物です。
私たちは、今の「より多く、より速く、より大きく」を推進している社会を変えるために、この動物の生き方を私たちの理念とし、さらに森のシンボルと考え、ナマケモノ倶楽部を発足しました。
私たちは、日本とエクアドルを中心に、
ナマケモノの森をまもる・・・環境運動→生態系を守り、そこに住む人の暮らしを支える
新しいライフスタイルの提案・・・文化運動→省エネ、低速、循環型の暮らし
フェアトレードの実践・・・エコビジネス→有機無農薬コーヒーなど持続可能な産業の支援
という活動を行っています。
< 日本とエクアドル >
今の社会は、先ほども言いましたが、「より多く、より速く、より大きく」が最大の価値であるかのごとく、それらを追い求め、私たちの自然、そして人間関係を大きく破壊してしまいました。日本の国内はもちろん、海外の鉱物を採取するために、多くの森、山、海を破壊してきました。エクアドルもその例外ではありません。
そのひとつであるインバブラ県コタカチ郡インタグ地方も、同じように日本による開発に被害を受けた場所です。インタグ地方は、このコタカチ郡の西部3分の2ほどを占める、亜熱帯地域を指します。その森は、この地方は、コロンビアの海岸からエクアドルの真ん中を通り、海岸へ抜けるチョコ・マナビ生命地域「緑の回廊」に属し、そしてコタカチ・カヤパス生態系保護区という国が制定する保護区に隣接しています。さらに、地球上に存在する25箇所の環境ホットスポットのうちの2つ(熱帯アンデス・ホットスポットとチョコ・ダリアン−西部エクアドル・ホットスポット)を有している。
それほど生態学的多様性に優れ、貴重な雲霧林、清泉が未だ残っている地域であり、多種の絶滅危惧動植物の住処であり、インタグ地方にしか存在しない種も多く存在します。しかしすでに90%もの原生林が現在に至るまでに姿を消しています。
このインタグ地方の西部に位置するフニン村を中心とするいくつかのコミュニティーがエクアドルと日本の両政府の合意により、銅などの鉱物資源の開発対象となりました。そして人間にとって大事な酸素を、動物たちにとっての大事な住処を提供してくれる森の木々を伐採し、さらに住民の生活用水である川を汚染し、社会的に大きな影響を与えるに至りました。
< 住民たちが選んだオルタナティブ >
しかし住民たちは、それに屈せず、鉱山開発にNOと言い、またそれにとどまらず、新しいオルタナティブの模索を始めました。自然に負荷をかけず、それでいて住民たちの生活をささえていけるような新しい道です。コタカチ郡は、環境保全郡を宣言しており、人々がよい環境で暮らせるような法的設備を整え、環境にやさしい産業を推進しています。
その産業のひとつにコーヒーがあります。このコーヒーは、森林栽培という方法で育てられたコーヒーで、森の中の木々の間に植えられます。木を伐採することなく、森の多様性を保つすばらしい方法です。
またインタグには多くの女性グループが存在します。彼女らは身の回りにあるカブヤやアロエを使い、環境に負荷を与えない生産過程を経て、生活に必要なものや装飾品を作っています。
またフニン村ではコミュニティー・ツーリズムを推進しています。コミュニティー全体で、森を守りつつ、国内外の外部の人に、この地域の自然の重要さを理解してもらい、そのすばらしさを楽しんでもらい、なおかつコミュニティーの人々との交流を推進する新しいツーリズムです。それは一過性のものでも、表面的なものでもなく、心からの交流です。
< ナマケモノ倶楽部としてサポートしたいこと >
ナマケモノ倶楽部はこれらの活動の推進を行うとともに、一緒に持続可能な社会作りをしたいと考えています。一番大事なのは、思いやりです。今までの「北(先進国)」と「南(発展途上国)」に代表されるような不公正な関係ではなく、自然と人間の、そして人間と人間の関係をつなぎなおすことです。私たちは、たとえばインタグで生産されているようなコーヒーであるとか、カブヤ製品だとか、そういった環境に負荷を与えず、なおかつ住民の生活を支えるような製品をフェアトレードという方法をとり、日本の消費者に届けています。
フェアトレードとは国際的な貿易をより平等にするために行われる、対話と透明性、敬意に基づく貿易のパートナーシップのことです。特に「南」の弱い立場にある生産者や労働者の権利を保障し、よりよい条件で取引することで、持続可能な開発を支えるものをさします。
しかしナマケモノ倶楽部として、私たちがさらに心がけているのは、日本の消費者に、生産地の背景、生産の過程、生産者、出来事、文化的行事や物語など、そういった生産にまつわるストーリーを届けることです。また消費者がどんなことを考えているか、何を求めているかなどを生産者に伝えることも重要です。
そうすることで、より生産者と消費者の距離が近くなり、お互いがお互いを大事にしようという気持ちが生まれるのだと私は信じています。それこそがフェアトレードの意味するところなのだと思います。
今回、ナマケモノ倶楽部のツアーのみなさんがこの5周年記念のイベントに参加していますが、こういうモノとモノの交流だけでなく、エコ・ツーリズムのような人と人の直接的な交流も、このようなつながりを作るのに重要な役割を果たしていると思います。
< これからの課題 >
しかしながらこれにも問題がないわけではありません。現時点で改善が必要なのは:
1. 生産者・消費者両サイドの認識の低さ
(フェアトレード、環境、つまり地球に対しての責任感のこと)
2. 生産者組織運営能力
3. 生産者・消費者両サイドの相互コミュニケーション、意思の疎通・尊重
しかし協力し合って向上していくことはいくらでも可能だと私は、この国に2年住んで改めて思いと強くしています。大事なのは、これは先進国により途上国への慈善事業ではなく、対等なパートナーとしての取り組みであるということです。
エクアドルのみなさんは、自分が持っているものに誇りを持ってください。私たち消費者は、生産者や生産地から学ぶことはたくさんあります。
この思いやりあふれるフェアトレードを進めるにあたって、ナマケモノ倶楽部の理念に則って、一緒に、ナマケモノのようにゆっくりと少しずつ前に進んでいけたらと思います。これこそが、平和で平等、なおかつ持続可能な社会作りにつながっていくのだと思います。
以上ですが、拙いスペイン語ですみませんでした。ご清聴ありがとうございました。
改めて、5周年おめでとうございます。これを機に、さらなる躍進をお祈りしております。
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