●はじめに
地球の裏側、赤道直下の小国エクアドル。ガラパゴス諸島をはじめとした類稀な生態系で知られているほか、先住民族が育んできた多様な文化がモザイクのようにこの国を彩っています。その豊かさの一方で、人々は経済的貧困にあえぎ、ドル化、グローバリゼーション「北」のための開発に苦しみ続けています。生物種の絶滅・減少を防ぐために最も重要と言われる世界に25あるホットスポットのうち、2つを有するコタカチ郡インタグ地方。地上と同様、金や胴などの豊富な地下資源が眠っています。エクアドル政府はそれらの採掘権を海外に売ることで外資を稼ごうとしています。
このインタグ地方で「次世代の子どもたちにもきれいな川や山を残したい」と願う人々が、鉱山開発という名の環境破壊から守るために森の中でコーヒーの栽培(森林農法)を始めました。2000年から、その豆は「インタグコーヒー」として日本にフェアトレードで販売されています。
●コーヒーの森の危機
インタグコーヒーの栽培面積は年々拡大され、収穫量も安定してきました。当初80世帯のコーヒー生産者は350世帯を超え、開発を食い止める力は大きくなっています。しかし、そこに資源がある限り開発の危機はなくなりません。村人たちは、外部の人間や役人が勝手に村に入り何か調査しているのを目撃して、不安を感じています。
2002年には、国のエネルギー&鉱山省がインタグのフニン地域の採掘権をインターネットで競売にかけました。エクアドルでは土地権と採掘権は別ですが、採掘権が売られてしまえば開発が始まり、山は削られ、河川は汚染され、人々の生活に支障が出ることは必至です。計画ではコミュニティの強制移住も記されていました。インタグの環境保全団体デコイン(DECOIN)が、国を相手にこれは違憲であると裁判を起こしましたが、2003年12月9日に敗訴となりました。
さらに2003年12月には、デコインにあるニュースが飛び込んできました。鉱山開発をしたい企業が医師を雇い、開発に賛成する人に無料で診察を行い、反対する人は診察しないという偏った医療サービスをはじめたというのです。診察にあたる医師は、開発に関していい面だけを村人たちに話しているという情報もあります。豊かな山と清流に囲まれたフニン村では、診療所で医療を受けるためには徒歩で5時間、馬でも2〜3時間かけなければなりません。フニン村から徒歩で5時間のコラソンという村ではこの医師が入った結果、人々が開発を受け入れ、中規模の金山開発がすでにフル活動で始まってしまいました。この同じ医師はフニン村に最も近いコミュニティ、チャルワヤク・バホにたどり着き、同じように偏った医療サービスを始めようとしています。
【参考資料】デコイン(DECOIN)のカルロス・ソリージャからのメール
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インタグの美しい雲霧林にかかる虹 |
●今、わたしたちにできること
これまでフニン村の住民は、コーヒー栽培というオルタナティブな選択をすることで一致団結してきました。しかし、医療サービスという命にかかわる問題を取引材料にされ、フニン村でも開発に賛成する動きが多数になった場合、インタグコーヒーの森は開発の危険にさらされてしまいます。
そこで、インタグ地方の生態系を守るために活動している環境保全団体デコインでは、フニン村をはじめとした住民が、公平な医療サービスを受け、開発と福祉を切り離して考えることができるようにと、「インタグ医療支援基金」を設立しました。デコインと協力関係にあるナマケモノ倶楽部はじめ関係企業も、日本でこの基金へのサポートを広く呼びかけることにしました。
基金は、各家庭への薬箱の提供、医師の派遣医療サービスの経費としてデコインを通じて寄付させていただきます。将来的には小さな診療所を建てることを目標としています。また、インタグ地方で伝統的に行われてきた薬草などを使った医療技術(知恵)の継承もサポートする予定です。
私たちは、インタグの人々の、短期的な利益のための開発ではなく、自然に寄り添う形での持続可能な開発を応援しています。これまでコーヒー生産者のみなさんが取り組んできた森を守るコーヒー作りを支援するためにも、平等で公平な医療サービスが必要です。
ぜひみなさまの「インタグ医療支援基金」への金銭的なご支援と、お知恵のご提供をお願いいたします。
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